政治そのほか速
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
【魔都ジャカルタシリーズ】インドネシアは、世界の摩訶不思議が全て集まった国だ。最先端の技術と古来からの発想が複雑に混ざり合い、インドネシア国民は他に例のない驚きの文化を築き上げた。そんな国にも今、高度経済成長の波が押し寄せている。だが国民が受け継いできた摩訶不思議の宝箱は、様々な怪奇現象を生み出し続けている。そう、今でも――。
その他の画像と動画はこちらから
日本人の方々は知らないと思うが、インドネシアという国では、軍人が誰よりも尊敬される。インドネシア独立戦争や各地での紛争に参加した退役軍人はまさにヒーロー扱いで、特に何かしらの「偉業」を達成した軍人はテレビ番組にも引っ張りだこ。とにかく、「国家の英雄」が多いのがインドネシアの特徴だ。ごく普通の町に住むごく普通のおじさんが、実は国家から勲章を授与された退役軍人だというのもよくある話である。
今回は同国の退役軍人の中でも一番有名な、タタン・コスワラ氏の話をしよう。
このコスワラ氏、かつてインドネシア陸軍の特殊部隊に狙撃手として所属し、東ティモール戦線に従事したという人物である。同地では41人もの独立派の闘士を射殺し、国外の軍事評論家からも高く評価されたA級スナイパーだ。
そのコスワラ氏が、3月2日に亡くなった。何と、トーク番組の生放の収録直後に。
■生放送中の悲劇
現地テレビ局トランス7の看板トーク番組『ヒタム・プティ』の生放送中に、それは起こった。この番組はマジシャンのデディ・コルブジエール氏が司会を務める、若者に人気のテレビコンテンツである。ちなみにヒタム・プティには、かつてJKT48も出演していた。
3月2日の放送のゲストは、タタン・コスワラ氏だった。何しろ彼は「国家の英雄」だ。コスワラ氏がテレビ番組に出演するというだけで、この国では高視聴率が見込める。
だがそれゆえに、インドネシア市民は突然の悲劇を経験することになる。何の前触れなく、コスワラ氏が倒れてしまったのだ。そしてそのまま帰らぬ人となった。享年68歳。死因は心臓発作である。
もちろんこれは、誰も予想し得なかった事態だ。インドネシア市民は、大きな衝撃に襲われた。
■東ティモール戦線に関わった過去
これと似たような“突然死”は、去年も発生している。
14カ国語を操ることができるアンボン出身の天才少女が国家情報局にリクルートされた直後、脳溢血でこの世を去るということがあった。コスワラ氏の死は、その出来事を否が応にも連想させる。
そもそもコスワラ氏が参加した東ティモールでの戦闘というのは、独立を要求する現地民をインドネシア軍が殺害し、拷問にかけ、強引な民族浄化を計画していたとして国際的に非難されている。野党グリンドラ党の党首プラボウォ・スビアント氏は去年の大統領選挙に出馬した人物だが、かつては陸軍高官として東ティモール戦線に関わり、住民虐殺を指示したと言われている。
ASEAN諸国の中でも治安が良く、経済も堅調なインドネシア。だがその裏を見れば、血で血を洗うような暗黒の歴史が積み重なっているのだ。
(文=澤田真一)
※画像は、タタン・コスワラ氏「YouTube」より