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今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞を受賞したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)が10日から公開される。
20年前、スーパーヒーロー映画『バードマン』でスターになったリーガン(マイケル・キートン)。だが今は仕事も家庭も失い、失意のどん底にいる。彼は演出、脚色、主演を兼ねたブロードウェーの舞台で再起を図るが…。
本作は、かつて『バットマン』シリーズに主演したキートンが自身をほうふつとさせる役柄を演じたことをはじめ、リーガンの心の叫びを象徴するバードマンの幻影、リーガンを襲う予期せぬハプニング、役者としては天才だが人としては最低な共演者のマイク(エドワード・ノートン)の存在など、全編が皮肉なブラックユーモアに満ちている。ところが、現実と幻想を交錯させた一種のファンタジーという側面もある。
イニャリトゥ監督は「リーガンは見果てぬ夢を追い掛けるドン・キホーテのような男。彼が抱く真面目な野心と、周囲の卑しい現実とのずれがユーモアを生むと考えた」と語っている。
また、観客に全編をワンカットで撮ったように思わせるカメラワークを現出した撮影監督のエマニュエル・ルベツキは『ゼロ・グラビティ』(13)に続いてのオスカー受賞となった。本作は、イニャリトゥ、ルベツキというメキシコ人の目から見たアメリカの映画、演劇界というユニークな視点、リーガンの心臓の鼓動を象徴するかのようなドラムを基調とした音楽も印象に残る。
ところで、アカデミー賞は監督、俳優をはじめとする映画業界人の投票によって決定する。「演じたい。注目され続けたい」と願う俳優のさがや孤独、映画、演劇界の舞台裏を描いた本作が、主要4部門で受賞した事実は、映画業界人にとっては甚だリアルな映画だったということの証しでもある。(田中雄二)