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グラビアから女優まで、“威圧系”を貫いた小池栄子の存在感

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グラビアから女優まで、“威圧系”を貫いた小池栄子の存在感

グラビアから女優まで、“威圧系”を貫いた小池栄子の存在感

 

 好視聴率のうちに幕を閉じたNHK朝の連続テレビ小説『マッサン』で、高い演技力が広く知れ渡った女優の小池栄子。巨乳を武器にグラビアアイドルとしてキャリアをスタートさせたが、狂気的な殺人犯から良妻まで、様々な役を演じ、女優として数多くの作品に出演。その一方で、バラエティ番組などで司会やタレントとしても活躍する小池は、なぜこんなにも多岐にわたり重宝されるのか? 確かな演技力で共演者からの信頼も厚く、芸人顔負けのトークで番組を進行させるオールマイティな小池栄子について改めて考察する。

小池栄子のこれまでの経歴や作品紹介

◆同業者たちが絶賛する小池栄子の“天賦の才”

 しっかり者のニシン漁師の娘・森野ハナを演じた『マッサン』では、夫・俊夫を演じる八嶋智人とガンガンやり合う様が面白く、さすが名脇役同士と感じさせた。小池の父親役の風間杜夫は「以前舞台でも共演したことがあって、非常に“確かな演技”をする女優さん。それを今回も改めて見せつけられた」と評している。20代前半は、巨乳を武器にグラビアアイドルの第一人者だったが、かねてより女優としての評価も高かった。27歳で主演した映画『接吻』では、殺害容疑で逮捕された男に惹かれるOL役で、『ヨコハマ映画祭』や『毎日映画コンクール』で主演女優賞を受賞。『第35回日本アカデミー賞』で10冠を獲得した『八日目の蝉』では、主人公に近づくルポライター役で『優秀助演女優賞』。ドラマや映画と出演作が途切れず、ほとんどが脇を固めるポジションながら、常に視聴者を唸らせる演技を見せてきた。

 一方でバラエティへの出演も多い。『爆笑問題の検索ちゃん』(テレビ朝日系)で初MCを太田光と務め、太田の暴走トークを巧みに受けたりいなしたりしながら、番組としての面白さを引き立てた。『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)では、村上龍と共に企業の経営者をゲストに迎え、ときに難しい経済の話題を一般視聴者目線でほぐす役回りを担っている。『ワンナイR&R』(フジテレビ系)ではコントに取り組み、共演した雨上がり決死隊の宮迫博之は「彼女は天才。前に出るときはしっかり出て、引くときは引く。そのタイミングは天性のもの」と絶賛する。

 現在はグラビアを卒業しているが、オンエア中の資生堂『専科』の「あとから篇」CMでは豊かなボディラインを見せるなど、セクシーさも健在だ。これだけ幅広く活躍中の小池だが、ドラマでは女優、バラエティではタレントが本業に見えて、どこでもしっかり根を張った佇まいがある。この存在感はどう生まれたのか? 現在はオールマイティだけに、彼女を紹介する際に“グラビアアイドルとして活躍した後”などと軽く触れられる若手時代に、やはり原点があるように思う。

◆“癒し系”の時代に“威圧系”を貫き存在感を提示

 2010年代は歌うアイドル、2000年代初頭はグラビアアイドルの戦国時代だった。そのなかで小池は、同じイエローキャブだった佐藤江梨子や井川遥、釈由美子らとグラビアやコミック誌の表紙で競い合い、トップに立った。当時のキャッチフレーズは“宇宙一のメロンパイ”という、いかにもなもの。だが、新人時代には編集者らが本人の前で「太もも、ウェストが太い」「あと何キロ痩せないと」と品評会のようにダメ出し。スマートかつ巨乳が人気の当時、小池のように骨太でグラマラスなタイプはブレイクしないとされていた。雑誌に載るようになってからも、女優志望でグラビアに乗り気でない小池は、モヤモヤが募ってバラエティ番組で「私、芸能界をやめます」と宣言したこともあった。だが、母親のひと言で心を一新して、グラビアにいちから取り組むように。“癒し系”が主流だった当時、マイナスとされていた自分の体型を逆手に取って“威圧系”を名乗り、あえて笑顔を見せない強気のグラビアで押した。それが他者にはない個性として際立った。『ウンナンの気分は上々。』(TBS系)にゲスト出演した際には、番組の流れでよゐこの浜口優を手加減なしに引っ叩いた。その思い切りが内村光良に気に入られ、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ系)の“社交ダンス部”で知名度を高めた。

 女優としての素質が業界で知られるようになったのも、グラビアをやっていた頃。2003年公開の映画『恋愛寫眞』がきっかけだった。主演ではないが、キーパーソンとなる役で、回想シーンでの狂気じみた演技のインパクトが強すぎたため、作品自体の評価が割れる要因にまでなった。その頃も小池は「グラビアはただの通過点ではない。プライドを持ってやっている」と発言していた。今の歌うアイドル戦国時代の中で、グループを卒業して女優へ転身するのがひとつの道筋となっているように、当時はグラビアで名前を売って女優などに“ステップアップ”しようとする流れがあった。だが結果的に、他の仕事が増えてもグラビアをないがしろにせず、最後までやり切った小池栄子が、女優としても最も成功している。何の仕事でも彼女が強い存在感を発しているのは、グラビアで“威圧系”として磨きをかけてきたことが活きている。ジャンルはどうあれ、1つひとつの仕事をとことんやり切る姿勢も含めて。

 “癒し系”の時代に“威圧系”で攻めたように、自分にしかない個性を貫くことも演技やバラエティでも変わらない。『マッサン』のハナのハツラツとした姿や、俊夫との口ゲンカでときに手が出るほどの勢いには、彼女らしさがストレートに現れていた。だから、小池栄子の代わりになる人材は思い浮かばない。グラビアの仕事はともすれば「胸が大きければ誰でもできる」と軽んじられる。しかし、小池栄子はそこで表現の基盤をガッチリ固めて、唯一無二の存在へと進化していった。

(文:斉藤貴志)

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