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[写真]代表取締役副社長に内定したディディエ・ルロワ氏(2013年撮影、ロイター/アフロ )
トヨタが発表した新しい役員人事が大きな話題となっています。外国人や女性の積極登用も目玉のひとつですが、もっとも重要なのは、同社がコーポレートガバナンスを重視した経営体制に舵を切ったことです。
トヨタ自動車は3月4日、新しい役員体制を発表しました。代表取締役副社長にはフランス人の専務役員ディディエ・ルロワ氏が内定し、新任の常務役員には北米トヨタの女性副社長であるジュリー・ハンプ氏が就任します。また、中卒で入社後、一貫して生産現場を渡り歩いてきた技監の河合満氏も専務役員になります。日本企業としては珍しく、ダイバーシティ(多様性)を重視した体制といってよいでしょう。
同社の2015年3月期の売上高見通しは27兆円とまさに前人未踏の領域に入っています。今回の人事は豊田章男社長自らが主導したといわれていますが、もう一段の成長を実現するには、従来の価値観の延長線では難しいと判断したものと考えられます。
外国人や女性の登用といった派手な側面が目立ちますが、今回の人事では、さらに重要な決定も行われました。それは、本格的なコーポレートガバナンス体制の構築です。
これまで日本企業は、経営・執行・所有を明確に分離するというコーポレートガバナンスの体制が不十分といわれてきました。国内株式市場における取引の多くが、短期的な利ざや稼ぎで占められており、長期保有を目的にした投資家は少数派です。諸外国に比べてガバナンス体制が不十分であることから、外国の機関投資家が日本市場に参加しにくいのです。
日本企業の多くは、経営と執行の分離という概念を十分に理解していないか、理解していてもそれをあえて実行していませんでした。取締役の名簿には、専務取締役、常務取締役、取締役部長という肩書きが並んでおり、執行側の上下関係がそのまま取締役会に持ち込まれています。取締役会は全員が対等の立場で議論するのが本来の役割ですから、社内の上下関係があっては、厳密な意味で機能しないわけです。
今回発表されたトヨタの取締役候補は全部で12名ですが、うち3名は社外取締役で、独立した立場から業務を監督することになります。それ以外の役員は社内からの登用ですが、広報担当専務役員以外は、すべて代表権を持った副社長以上の人物で構成されています。取締役会に参加する社内の人間は、基本的に経営の仕事に集中することになりますから、経営と執行はほぼ明確に分離されることになります。執行側の上下関係が取締役会に持ち込まれるという弊害についても、取締役会に執行側から参加する人物のほとんどが代表権を持っていることから、ある程度対等な議論が担保できます。
諸外国の企業では、取締役は社長以外すべて社外というところも少なくないのですが、日本の土壌にはこうしたドライな方式はあまり馴染みません。今回のトヨタの役員構成は、いわゆるグローバルなガバナンスとは少々異なっているものの、ガバナンスの本質的な意味をしっかりと理解したものであり、この体制であれば、海外の投資家も十分納得するはずです。トヨタの新しい役員構成は、今後の日本企業のモデルケースになるかもしれません。
(The Capital Tribune Japan)
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