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シリコンバレーで車を運転しながらラジオを聴いていると、頻繁に耳にするのが「@(アット)ウォルマートラボは人材雇用中です」というCM。
@ウォルマートラボは、巨大スーパー、ウォルマートのE(電子)技術開発部門で、シリコンバレーに複数の拠点を持っています。ウォルマートといえば安さで勝負、ローテクな印象が強いスーパーなのですが、実はEコマースの売り上げだけで年間100億ドル(1兆円)超もあり、全米のEコマース売り上げでトップ5に入ります。さらに、Eコマーストップであるアマゾンの売り上げ700億ドルも視野に入れ、Eコマース関連技術の拡張に余念がありません。
その拡張方法は「買収」。シナジー(相乗作用)のある技術を持ったベンチャーを次々に買収し、過去4年弱で13社を@ウォルマートラボに吸収してEコマース技術開発増強を実現してきました。
買収対象はこんな感じです。
まず2010年に、ビデオストリーミングのVUDU(ヴードゥ)を買収。買収額は1億ドルとされ、現在でもVUDUという名称で独立した配信サービスを提供しています。
翌2011年にはモバイル・コマース技術のSet Direction(セットディレクション)を買収。Set Directionはスマートフォン開発製造のパーム社を辞めた人が起業したベンチャーですが、創業者のパーム時代の同僚がウォルマートに転職していたので意気投合した模様です。その1か月後にはKosmix(コズミックス)を買収。Kosmixはサーチを核としたベンチャーで、その技術がウォルマートサイトの検索精度向上に生かされるとともに、Kosmixチームが@ウォルマートラボの核となっており、買収額は3億ドルと噂(うわさ)されています。さらに、ツイッターやフェイスブックの情報を解析するOneRiot(ワンライオット)や、店内で買い物をしている人に電子化したレシートを出すGrabble(グラブル)、モバイルアプリ開発のSmall Society(スモールソサエティ)を買収しています
2012年の買収は1社のみで、誕生日などの記念日を通知するフェイスブックアプリのSocial Calendar(ソーシャルカレンダー)。同社の技術は、ウォルマートのサイトでギフトを送るためのソーシャルプラットフォームとして活用されました。
2013年にはまたペースを取り戻し、クラウドコンピューティングのOneOps(ワンオプス)、ビッグデータ解析のInkiru(インキル)、サイト高速化のためのTorbit(トービット)を買収。話題になったところでは、実績ある有名エンジニアが共同創業者のTasty Labs(テイスティラボ)も買収しました。
今年になってからは、2000以上のサイトのレシピを取りまとめるYumprint(ヤムプリント)、広告技術のAdchemy(アドケミー)を買収しています。
さて、日本の会社の方によく
「シリコンバレーで良いエンジニアを雇うにはどうしたらいいか?」
と聞かれるのですが、答えは「もの凄(すご)くクールな技術を開発していることでエンジニアを惹(ひ)き付ける」か「良いエンジニアがたくさんいる会社を買う」か、そのどちらかしかありません。
ウォルマートも最初は同じ質問から出発したと思いますが、残念ながら全くクールなイメージのない伝統的小売業だったこともあり、後者を選択したことになります。しかしながら、1社あたり勤続年数が1-2年しかないエンジニアも多いシリコンバレーでは、1社だけ買収しても優秀な人たちはあっという間にいなくなってしまいます。そこで次々と買い続けることで、発展の車輪の回転が止まらないようにしているのでしょう。
このウォルマートの進出方法は、日本の会社の皆さんにも参考になるのではないでしょうか(難しいことではありますが)。