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東日本大震災関連の証言映像とニュース映像1000本以上が収録されているNHKのウェブサイト「東日本大震災アーカイブス」が新たな役割を担おうとしている。震災被害の風化を防ぎ、震災の教訓を自分のものとするためには、何ができるのか? 震災4年目に向けた課題を聞いた。
[写真]震災4年目を迎え、NHKがリニューアルした「東日本大震災アーカイブス」
NHKは、2012年1月7日に放映が始まった5分のミニ番組「あの日わたしは」で収録した映像を「東日本大震災アーカイブス」で公開してきた。「あの時、何が起こり、人々はどう行動したのか」を知ってもらおうと、さまざまな場面で被災した人たちの証言を集めた映像500本と首都圏や地方の放送局が取材したニュース映像800本を収蔵。教室での利用など、利用者が目的に応じて映像を探せるようになっている。
膨大な資料を収蔵する一方で、「防災に関心がある人のなかでも、震災の記憶が薄くなってきています」と話すのは、同サイトの責任者を務める倉又俊夫チーフプロデューサーだ。NHKは2014年冬、サイトの利用意向についてグループインタビューを行った。そのなかで感じた印象なのだという。
グループインタビューに応じた利用者は「どこから見始めていいか分からない」「備蓄に必要な量はどれくらいか」といった実利、実用の目線から情報を求めていた。倉又プロデューサーによると、アーカイブスのニーズは、次の3つの時間軸に分類できるという。
・その日どうだったのかを知りたい
・どう変わったのかを知りたい
・今どうなっているのかを知りたい
震災被害の生々しさに人々の関心が集まり、そうした映像が必要とされる時期から、時を経て、その震災が今の自分たちにどう役に立てられるのかという教訓を活かす時期に変わってきたというわけだ。
「一言で『被災者』と言っても、仮設住宅から出られる人、出られない人などがいて、それぞれの問題が拡散しています。また『震災の被害が大変だったんですよ』という証言映像だけでは伝わらなくなっています。これが4年目の難しさです」と倉又プロデューサーは話す。
アーカイブスというサービスは、いつでも利用者が自分が必要とする映像証言を引き出せるようにはなってはいるが、逆に言うと、利用者に明確な目的がなければ適切な映像を引き出すことができない。そしてまた、毎日、毎週、見に訪れる類のコンテンツでもない。「しばらく間を空けてから見てみたい」というのが利用者の意見だった。
アーカイブスの年間アクセスで圧倒的に多いのがやはり3月。そのため、この時に必要とされている証言をタイムリーに提供しようと、震災4年を前にリニューアルすることを決めた。3・11に自然とアクセスが集まるとしても、明確な目的を持たない利用者にどう証言映像を伝えればよいのか? キーワードは「まとめ」だ。
震災の翌年に始まったこのサービスは、「映像の見方は見る人が決める」という方針で始まった。それ以来、NHKが個別の証言に意味を持たせるような演出は避けてきた。しかし、利用者に映像を利用してもらうためには、ただ並べておくだけでなく、アーカイブ映像に「意味」を持たせて、“おすすめ”をすることが必要なのではないかという結論に至った。
数ある映像のなかから、どの映像が最も印象的で、いまこのタイミングで伝える価値があり、見てもらうべきか。これは、いわゆる「キュレーション」だ。キュレーションというのは、ただのピックアップやランキングを見せることは違う。NHKがどの証言映像が重要なのかという価値判断をし、なぜ重要なのかという意義付けをして紹介する。これまでの方針を転換する大きな決断だった。
印象に残る証言をメンバー全員で出し、まとめのテーマを決めた。「救えなかった命」というテーマでは「あの時こうしていれば……」という回顧と反省を軸に映像を組み立てた。このほか初動に役割を果たした「消防団員の活躍」や「津波にのみこまれて」「避難所での生活」など11のテーマで表現する。
震災映像だけでなく、被害から復興に向かう映像もまとめた。こちらは「三陸鉄道」「奇跡の一本松と高田松原」「原発事故後のくらし」など8テーマ。倉又プロデューサーは「たとえば『三陸鉄道』というテーマを立てることで、点である個々のニュースを時系列に並べることで線や面に見えてくる」と立体的に構成していくことに意欲を見せる。
「これまで証言映像の本数を求めてきましたが、それではいけないということが分かりました。アーカイブスは見てもらうことがゴールではありません。これを活用してもらってはじめてアーカイブスが生きてきます」と話している。
本記事は「THE PAGE」から提供を受けております。
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