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文=安藤隆人
鹿島アントラーズの日本代表MF柴崎岳が、Jリーグのプレースピードに警鐘を鳴らした。
AFCチャンピオンズリーグのスケジュールに合わせて変則開催となった明治安田生命J1リーグ第6節、柏レイソル対鹿島アントラーズの一戦。試合は非常にテンポの速い展開となり、結果は3-1で鹿島が勝利。素早く攻守が入れ替わる見応え十分のサッカーの中において、落ち着いたプレーを見せる柴崎岳の存在感は際立っていた。
「最初は相手の攻撃に戸惑ったけれど、運動量を増やして、僕らボランチとサイドハーフでうまく連動しながら対応した」と振り返ったように、柏の3トップに対して4バックが対応するが、センターフォワードのレアンドロが引いてきてボールを受ける際は、センターバックではなく柴崎と梅鉢貴秀のボランチが対応。状況によってはトップ下の武富孝介、ボランチから飛び出す大谷秀和という3人をボランチの2人でケアしなければならなかった。それでいて攻撃のスイッチを入れる役割もこなし、前線への飛び出しも狙う。かなりの負担が柴崎には掛かっていた。
しかし、守備面では梅鉢と連携し、レアンドロを抑えながらも対峙する武富にプレスを掛ける。ボールを奪ったら一気にサイドや縦へ展開し、前線までスプリントして好機に絡む。37分にはカウンターから土居聖真がドリブルで運ぶと、右外側を猛ダッシュで駆け上がって相手DFを引き出した。前半アディショナルタイムには右FKから植田直通のJ初ゴールをアシスト。後半、さらに試合のテンポが上がる中でも運動量を落とすことなく、質の高いプレーを見せ続けた。
「テンポが速く、プレッシャーが厳しい中でどれだけ質の高いプレーができるか。僕はそこにこだわっている」
柴崎は青森山田高時代から常々こう語っていた。高校時代から図抜けた実力を持っており、同世代間でのプレーではどうしてもテンポの遅い展開になりがちだ。だが、それに甘えることなく、「より狭いスペースや予測が難しい状況でも普段のプレーができることを求めている」と自らに高いハードルを課してプレーしていた。
いつしかその舞台がプロになり、鹿島の中心選手になると、今度はJリーグ自体が時として「物足りない」状況になり始めていた。
「もっとJリーグも速いテンポでやらないと、もっと上には行けない」
昨シーズンから彼のプレーを見ていると高校時代のように“より厳しい状況”を求めて前線へのスプリント回数を増やしたり、攻守においてよりストイックにフル稼働するようになった。
一番のハイライトは、今年1月のAFCアジアカップ準々決勝のUAE戦で決めたゴールだ。本田圭佑(ミラン/イタリア)にクサビを当ててからの彼のゴール前の密集地帯に飛び込むスプリント、そして足下に来たボールをスピードを落とさずに狙いすまして打ち込む技術。まさしく瞬間的に訪れた「厳しい状況」で、そこで質の高いプレーを披露した。
「もっとハイテンポに、もっと厳しく」
この思いを抱いてプレーをする彼は、柏戦を楽しんでいるように見えた。試合後、彼に感想を伝えると、ハッキリした口調でこう返ってきた。
「こういう試合は疲れるけど、やりやすい。でも、ハイテンポな試合をスタンダードにしてやっていかないと。Jリーグのあまりテンポの速くないサッカーよりもハイテンポのサッカーのほうがより考えるし、上のレベルで通用することになると思う。いかにハイテンポの中で運動量を増やして、質の高いプレーができるかを常に考えていきたい」
柴崎岳が欲するのは『厳しさ』だ。それも、ちょっとやそっとの厳しさではない。だからこそJリーグにもレベルの高さを求めている。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、Jリーグの実行委員会に出席した際にプレースピードの遅さを指摘していた。柴崎のコメントは、まさに高みを目指しているからこそに他ならない。こういったテンポの速い試合がJリーグのスタンダードになっていかなければならない。柴崎の言葉と姿勢は、Jリーグの現状に警鐘を鳴らしていると言っていい。