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映画『バードマン』は“白ブリーフ”オヤジへの応援歌である

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映画『バードマン』は“白ブリーフ”オヤジへの応援歌である

映画『バードマン』は“白ブリーフ”オヤジへの応援歌である

 

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その65 ―

 今年のアカデミー賞の目玉となり、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4冠を達成した「バードマン」、正式には「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」であるが、これはオヤジに向けた応援歌ではないかと思っている。

 作品はすでに見ている。ここで内容やインプレッションを沢山語るつもりはない。言いたいのは「バードマン」と、「バットマン」の相似性である。映画「バードマン」は、昔一世風靡したコミックヒーローで、映画だから架空のキャラクターだ。そしてバードマン役のリーガンが、再起を賭けるドラマだ。そのリーガンに昔「バットマン」で売れて、その後、大したヒットに恵まれてないマイケル・キートンを起用するってどういうこと。まんま虚構の映画とマイケル・キートンの実人生がシンクロしているじゃないか。

「バードマン」と「バットマン」って名前がかなり似てるでしょ。鼻から上だけ隠すマスクも似ている。等身大のヒーローで、空を滑空するのも一緒。だから「バードマン」はマイケル・キートンの起用なしでは成立しなかったのではないか、そう思えて仕方がない。

 そしてふたを開ければ、映画は大成功。マイケルキートンは、奇跡のカムバックを果たしたヒーローとして、称賛の嵐だ。アカデミー賞主演男優賞こそ逃したが、ゴールデングローブ賞を始め、各映画賞の主演男優賞を沢山もらっている。映画を見ていると、リーガンを応援しているんだか、マイケル・キートンを応援しているんだか、わけがわからなくなるところが御愛嬌だ。

 日本公開を目前に控え、パンツ一丁姿しか印象がない映画なので、少しだけネタを提供しよう。まず冒頭シーンで、半裸のリーガンが空中浮遊しながら、瞑想もどきのことをやっていることに面食らう。超能力なのか、あるいは妄想なのか、そこは見ている側の判断に任せよう。ただリーガンの老いた、肉体が痛々しい。昔の栄光を背負いつつ、贅肉だらけの体を見せられる。彼の置かれている状況が手に取るように分かるというものだ。

 話題のパンツ一丁だが、60歳ってアメリカでも白ブリーフ世代だったんだと、お久しブリーフの田代まさしを、なぜか思いだした。その世代って、日本じゃほとんど白ブリーフで育っている。それから色気が出て、一部ブーメランパンツに走るやつもいるが、多くはトランクスへ移行する。けど能天気な輩の一部はすくすくと、白ブリーフで大人になり、そして老いていくのである。ゴルフ場でたまに、見かける白ブリーフじじいって、この映画のヒットにより、トレンドになるのか、それは怪しいな。

 なんでブリーフ姿で街を歩くかだが、それはシアター本番直前にアクシデントが起こるからだ。仕方なくリーガンは、パンツ一丁姿で、楽屋裏から正面入り口まで歩いて入らなければならない。開き直ってパンツ一丁で歩くや、通行人にスマホで撮影され、ネットで公開。SNSも使わないお父さんは古臭いと娘になじられていた矢先、恐ろしいアクセス数を記録し、父親の面目躍如ってところか。

 そしてリーガンの舞台化した作品は、レーモンド・カーヴァーが原作。日本でレーモンド・カーヴァーといえば、村上春樹が訳していることで有名。よく比較される「アメリカンスナイパー」に動員数で負けているバードマン。日本でのバードマンのヒットは、レーモンド・カーヴァー繋がりで、村上春樹ファンの動員という気もするんだが、どうでしょう。

 老体に鞭打って、再起を賭ける白ブリーフおやじがどんだけ共感を得るか。その世代って、あんまり映画見ないからね、そこが問題なんだよなあ。

●『バードマン』 配給:20世紀フォックス映画

4月10日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー

■木村和久(きむらかずひさ)■

トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦

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