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「星野リゾート 青森屋」“すこっぷ三味線部”の本気がスゴイ

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「星野リゾート 青森屋」“すこっぷ三味線部”の本気がスゴイ

 「すこっぷ三味線」なるものをご存じだろうか? スコップを音楽に合わせて栓抜きで叩き、まるで津軽三味線を弾いているかのように音を出す技芸である。1980年代に宴会芸として生まれ、いまでは毎年世界大会が開かれるほどの人気だ。
 
 先日、青森県を旅した際、初めてその演奏を目にしたのだが、単なる真似とは思えない演奏のクオリティの高さに感激。帰宅後、思わず近所のホームセンターに走り、スコップと栓抜きを買ってしまった。
 
 私がすこっぷ三味線を見た場所は、青森県三沢市にある「星野リゾート 青森屋」。青森の魅力を丸ごと体感できる温泉旅館として人気を集めており、ユニークなもてなしが多いのが特徴だ。そのひとつが夜な夜な開催されている「じゃわめぐショー」。すこっぷ三味線をはじめ、郷土芸能である津軽三味線、南部民謡、青森ねぶた囃子などのショーが、なんと無料で楽しめる。
 「じゃわめぐショー」でのすこっぷ三味線。
 最初は「すこっぷ三味線って、宴会芸なんでしょ?」と気楽に構えていた筆者だったが、演奏が始まるとすぐに引き込まれ、ステージに釘づけになった。まずはしっかりチューニングから始めるのだが、真面目な顔でそれっぽくやるもんだから、「あれ、弦が付いているんだっけ?」とつい目を凝らしてしまったほど。いざ音楽がスタートするとメロディに合わせながらスコップを力強く、そして軽快に叩きつけていく。その手の動きや指使いは、もう惚れ惚れするほど見事。そして紡ぎだされる音色は、なるほど、確かに津軽三味線によく似ている。
 
 スコップと栓抜きでこれだけの演奏ができるということにも驚いたが、演奏しているのが同旅館の社員だと聞いてまたビックリ。なんでも、2009年に社員有志で結成された「すこっぷ三味線部」のメンバーで、同部は過去に「津軽すこっぷ三味線世界大会」に出場し、優勝したこともあるのだとか!
 
 同旅館の広報担当者に話を聞くと、すこっぷ三味線部には現在15名前後の部員がいるという。…「誰でも入部可能ですが、ステージデビューは試験に合格しないとできません」
 結成当初は青森県五所川原市にいるすこっぷ三味線の家元に習い、ビデオに練習風景を撮影して、それを見ながら旅館でも練習を重ねたそうだ。すこっぷ三味線は曲によって演奏方法が違い、いまでも新曲を演奏するときは家元に教えてもらっているとのこと。
 
 それにしても、なぜ世界大会に参加することに?
 「使用するスコップが雪国の青森らしく、宴会芸として生まれた話などがとても面白いと感じたからです。それまですこっぷ三味線の存在を知らなかったので“こんなおもしろいものが青森にあったのか”ということになり、エントリーすれば誰でも出られることを知って、出場いたしました」
 ただ、通常業務のあるスタッフもいたので、全員での大会参加は断念。精鋭部隊が出場し、見事優勝を勝ち取ってきた。残念ながら1度優勝するとその後は出場できないそうだが、このとき記念にもらった漆塗りのスコップは館内に飾られているので要チェックだ。なお、世界大会は毎年12月に発祥地である青森県五所川原市で開催されている。
 
 ちなみに同旅館には、もう1つユニークな“部”として、4頭の馬社員が所属する「馬事業部」がある。ただし、こちらは“部”といっても部活動ではなく事業部。同旅館のある三沢市は古くから良馬の産地であり、馬車運行をはじめた2007年に馬事業部を結成したそうだ。午年だった2014年には2頭のポニーが新入社員として仲間入りもしている。
 
 先輩社員の2頭は季節ごとに馬車を運転しており、2013年からは冬季限定で日本初となるストーブ馬車を運行。ストーブで温まりながら、馬車に揺られ、雪景色の公園を巡るというのは他ではできない非日常体験である。とにかく楽しいので、こちらもおすすめだ。
 日本初のストーブ馬車。ストーブがついているのでぽかぽか
 甘酒やゴボウ茶、それにストーブの上で焼いてくれるスルメも美味!
 「星野リゾート 青森屋」では、このほかにも体感ショーレストラン「みちのく祭りや」や、和洋中80種類の料理が並ぶバイキングレストラン「のれそれ食堂ぬくもり亭」、ぬるりとした肌触りが気持ちよい良質の温泉などがあり、青森文化をたっぷり満喫できる。…“のれそれ青森~ひとものがたり~”(※のれそれは津軽弁で目一杯、一生懸命の意)をコンセプトに掲げており、他にはないユニークな体験が目白押し。
 
 最後に筆者自身のすこっぷ三味線の腕前だが、その後なかなか上達していない。実際にやってみると、あのような滑らかな動きをマスターするには相当練習が必要なことがわかった。それからこれは盲点だったのだが、自宅で叩いてみると、意外に音が大きい。近所から苦情がこないよう、かなり控えめに叩いていることもあり、なかなかうまくならないのだ。みなさんにはぜひ現地で、世界一に輝いた音色を堪能することをオススメしたい。
 (古屋江美子)
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