政治そのほか速
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私、『赤毛のレドメイン家』の味方です。
村松友視風に書いてみた。
ミステリー史に名を残すイーデン・フィルポッツの名作である。
この作品、江戸川乱歩が力一杯激賞したことで知られている。どんなことにも反動はつきもので、乱歩の威光が薄れるにつれて否定意見が頭をもたげてきた。曰く「『赤毛のレドメイン』は古臭い」「主人公が頓馬なだけで、ちょっと気の利いたミステリー・ファンなら真相も判ってしまう」「あれだけのネタで長篇を読ませるのか」などと。
わ、わかってらい。でもな、『赤毛のレドメイン家』はそこがいいんだい。おまえのかーさん、でーべそ!
と、何べん顔を赤くして反論したことか。詳しくはネタばらしになってしまうので書けないが、『赤毛のレドメイン家』は究極の自意識過剰男ミステリーである。ざっくばらんに言ってしまうと童貞っぽい。その青臭いところがいいのだ。
それでも「えーっ」とか言っている読者には代案を出したい。『赤毛のレドメイン家』が古くて主人公が頓馬で長いのが嫌なら『だれがコマドリを殺したのか?』はどうか。
このたび創元推理文庫から新訳が出た『だれがコマドリを殺したのか?』は、フィルポッツがハリントン・ヘクスト名義で1924年に発表した作品である(小山内徹の旧訳は『誰が駒鳥を殺したか?』)。『赤毛のレドメイン家』の2年後だ。あちらが今一つだと感じた人には、ぜひ本書を読んでもらいたい。飛び切りおもしろいサスペンスだからだ。
『だれがコマドリを殺したのか?』のいいところ、その1。
なんといってもコンパクトでプロットが緊密である。この話は医師のノートン・ペラムがヘンリー・コートライトの娘である姉妹、マイラとダイアナに出会う場面から始まる。ノートンは妹のダイアナに一目惚れしてしまうのである。
ところが、その恋には問題があった。ノートンの伯父であるジャーヴィスは、秘書のネリー・ウォレンダーと甥が結婚するものだと思い込んでいた。もしノートンがその意志に背けば、遺産はびた一文渡さないとの明確な意思表示があったのである。ダイアナの側にも問題があった。彼女には準男爵のベンジャミン・コートライトが求婚をしていたからだ。姉のマイラはそのことを祝福してはいたが、内心では彼女自身もベンジャミン卿を愛していた。しかし、恋は盲目の喩え通り、ノートンとダイアナは周囲の反対を振り切って結婚してしまう。当然ノートンは伯父の不興を買ったが、気弱なところのある彼は、その事実を妻には伏せたまま新婚生活に入ってしまう。…