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厄介な女心【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第26話】

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厄介な女心【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第26話】

 厄介な女心【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第26話】

 桃香と冬馬は車に乗り込み、ふたりきりになった。
 
 
 ハンドルを握りながら冬馬は黙り込み、桃香ははがゆいような複雑な気持ちになった。気分をまぎらわせようと歌を口ずさんだ。この前、カオル先生に褒められた恋の歌だ。慎吾が横目で見て笑った。
 
 「こりゃいいや、ipodいらないな。便利だー。リクエストしたら何でも歌ってくれる?」
 
 「ダメだよ。カーオーディオじゃないんだから」
 
 「あのさ、もうじきクリスマスだろ。だから決心したんだ。自分の気持ちにケリつけるにはいい機会だ。クリスマスでもなけりゃ、こんなこと言えない」
 
 「ケリつけるって?」
 
 「慎吾とおまえが付き合ってるのかどうかよくわからない。だったら、お前らがあやふやなうちに言ってしまおうと思って。早いもの勝ちだ。桃香、俺とつきあってくれよ。慎吾じゃなくて俺と」
 
 「冬馬…」
 
 「言っただろ。高校ん時から思ってたって。あんときはいくじなしのガキだったから言えなかったけど、今なら自信ある。桃香を幸せにする。クリスマス、俺と会ってくれれば誰と過ごすより楽しい日にしてやる」
 
 「ちょっとびっくり…」
 
 桃香は頬が熱くなるのを感じた。日中は慎吾の動きにドキドキしていたくせに。女心は厄介だと感じた。
 
 「慎吾と約束があるかなんて俺には関係ないから。もし慎吾と付き合うならはっきり断ってくれていいよ。潔くゆずる。スポーツマン精神にのっとって」
 
 冬馬の言い方がおかしくて、桃香は急に力が抜けてリラックスした。フフっと笑いながら答えた。
 
 「オリンピックみたい」
 
 「そうだな。ちょっと俺、馬鹿だな」
 
 冬馬がクシャっと笑った。緊張していた空気がスっとゆるんだ。
 
 「遠回りしないか。夜景が見えるところに連れてってやるよ。俺のナンバーワン夜景スポット」
 
 (続く)
 
 【恋愛小説『自由が丘恋物語 ~winter version~』は、毎週月・水・金曜日配信】
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 (二松まゆみ)

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