政治そのほか速
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【カイロ=久保健一】チュニジアの首都チュニスで18日、博物館が襲撃され、多数の外国人が殺害された事件は、民主化運動「アラブの春」を端緒とした社会の混乱が、中東全体を覆う深刻なものであることを改めて示した。
民主化を進めるチュニジアでは、イスラム過激派の影響拡大に一段と警戒が強まっている。
チュニジアでは2011年1月、民主化デモによりベンアリ独裁政権が崩壊。「アラブの春」の先駆けとなった。その後、中東諸国で民主化デモが波及し、独裁政権が相次いで倒れた中で、チュニジアは政変後に民主化のプロセスを着実に進め、世俗派勢力とイスラム主義勢力の融和に成功した唯一の事例とみなされていた。
だが、中東民主化の「優等生」とされるチュニジアでも今回、凶悪な襲撃事件が発生。イラク、シリア両国での「イスラム国」の台頭に象徴されるイスラム過激派勢力の影響が、チュニジアでも確実に浸透しているという厳しい現実を示したといえる。
チュニジアのセブシ大統領は18日の事件発生後、国営テレビに対し、「イスラム過激派は少数派であり、恐れるに足りない」と強調した。同国の世俗派勢力の中心人物で、徹底したテロ掃討を掲げるセブシ氏が改めて決意を示したものだが、実情を見れば楽観できる状況にはない。
チュニジアでは、政変後の治安や政治の不安定化で、外国からの投資や観光客の流入が低迷。失業者も増えて国の将来への展望を見いだせない中で、多くの若者たちがイスラム過激思想に引き込まれている現実がある。
米情報会社「ソウファン・グループ」の調べでは、チュニジアから過激派の戦闘員になるためにシリアに渡った人数は推定3000人に及び、国別では最も多いとされる。
今回の事件の舞台となった国立バルドー博物館は、古代ローマ時代の多彩なモザイク画の収集で知られ、古代カルタゴ遺跡と並ぶ「チュニジアの顔」だ。博物館の敷地内で銃を構える治安部隊や逃げまどう観光客の映像が、テレビで世界に放映されたことによるマイナスイメージは計り知れない。
今年2月の世俗派、イスラム主義の両勢力による本格政権発足により、政変後の民主化プロセスを終えたチュニジアだったが、事件は今後の国の前途に大きな不安を投げかけた。