政治そのほか速
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【カイロ秋山信一】イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシに対する軍事作戦を始めたサウジアラビアに対し、サウジ王家と同じイスラム教スンニ派が支配的な国からは支持表明が相次いだ。サルマン国王は今年1月の即位以来、スンニ派諸国の首脳と精力的に会談。シーア派国家イランやイスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の脅威を挙げて、スンニ派の団結を訴える「根回し」の成果が出た格好だ。
「サウジアラビアの介入を支持する。状況の進展によっては、物資援助も検討する」。トルコのエルドアン大統領は26日、フランスのテレビ局とのインタビューで、サウジ支持を表明。さらにイランがフーシを後援しているとして「イランは(イエメンから)撤退しなければならない」と強い調子で非難した。トルコはイランと良好な外交関係を築いており、名指しでの批判は異例だ。
さらにサウジのようなスンニ派の君主制国家だけでなく、地域大国のエジプトやパキスタンも軍事作戦への協力を表明し、フーシに対する「スンニ派連合軍」が構築された。
各国の素早い反応の裏には、サウジの周到な準備がうかがえる。サルマン国王は即位後の2カ月間で、ペルシャ湾岸諸国やエジプト、トルコ、パキスタン、アフガニスタンなどの首脳とハイペースで会談を重ねてきた。その間、イエメンではフーシが権力奪取を進めており、各国から軍事介入への同意を得ていた可能性がある。
2011年の民主化要求運動「アラブの春」以降、スンニ派諸国には大きな溝が生じていた。各国で台頭するイスラム組織ムスリム同胞団について、「体制への脅威」とみなすサウジやアラブ首長国連邦(UAE)と、「新興のパートナー」とみるカタールやトルコの間で意見の隔たりが生まれたのだ。13年7月にエジプトの軍事クーデターで同胞団主体の政権が倒れると、対立が深刻化した。
この対立は今も尾を引いており、エルドアン大統領は3月2日にサルマン国王と会談した後、トルコ紙ヒュリエトに「対エジプト関係が唯一の不一致点だった」と意見の相違を認めた。しかしイエメン情勢を巡っては、「共通の脅威」であるシーア派の影響力拡大を前に対立が棚上げされた。