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[東京 10日 ロイター] – 日経平均株価<.N225>が15年ぶりに2万円台を回復した。海外投資家を引きつけた「アベノミクス」、黒田東彦日銀総裁による「バズーカ緩和」の円安効果、さらに世界的な緩和マネーが株高を演出。今後は公的マネーなどによる債券代替の買いも期待されている。
2020年の東京オリンピックまで株高は続くのか。一部では、消費再増税、量的・質的緩和の出口戦略、企業業績という3つのハードルが意識されている。
<売る材料のない相場>
2012年11月、いわゆる「近いうち解散」で民主党政権が終えんを迎え、同年12月には自民党の安倍晋三首相による新政権が誕生した。13年4月には日銀が異次元緩和を打ち出したことも追い風に、日経平均は12年11月安値からきょうの高値まで1万1386円高、2.3倍の大幅な上昇をみせている。
原動力となったのは、海外投資家の動きだ。日経平均が1年間で56.7%上昇した13年、海外投資家は現物と先物で日本株を約15兆円買い越した。
海外勢の買い越し額が約7000億円に減少した14年の上昇率は7.1%に鈍化したものの、今年2月以降の株高局面では、月間ベースで海外勢は買い越し姿勢を再び強め、大台突破の原動力となった。
世界的にみれば、株高は日本のみの現象ではない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「年初来の株価パフォーマンスをみれば、量的緩和を開始した欧州、追加緩和を示唆する中国、そして日本の順番となっている」と指摘。緩和マネーが世界各地の株価を押し上げているのが現状だ。
また、外為市場では11年に1ドル75円台を付けたドル/円相場も、足元は120円台までドル高/円安が進行。トヨタ自動車<7203.T>やパナソニック<6752.T>など輸出関連企業が収益面でV字回復を遂げた。
円安基調の継続による好業績への期待感に加え、配当性向の引き上げなど株主還元策を強化する上場企業の動きも評価されている。
さらに、日銀によるETF(上場投資信託)買いには余力がみられるほか「公的年金に加え、今後はゆうちょやかんぽなどの新たなプレーヤーの台頭も期待され、上昇基調は続く公算が大きい」(岡三証券・日本株式戦略グループ長の石黒英之氏)との見方も出ている。
強気が支配する今の市場では、日経平均が今年中に2万円に達成することは、ほぼコンセンサスとなっていた。今後も「売る材料も過熱感もなく、じりじりと上昇する相場が続いていくだろう」(中堅証券)との見通しが広がっている。
<現実味薄い3万円回復>
13年9月には、2020年の東京オリンピック開催が決定。株式市場にとどまらず、経済全体にとっても明るい材料となっている。
しかし、オリンピックイヤーまでの日経平均3万円台回復という「ばら色の未来」を想像する市場関係者は、今のところ少数派。消費再増税、量的・質的緩和の出口戦略、企業業績という3つのハードルが待ち受けているためだ。
日本アジア証券の清水三津雄エクイティ・ストラテジストは「東京五輪でインフラ需要などは出てくるが、景気の回復基調が強固ではないなかで、消費再増税を実施し経済に悪影響を及ぼすこととなれば、海外投資家が日本株買いに動く大前提が崩れる」と話す。税率の10%への引き上げは17年4月に延期されたものの、国内景気の先行きは予断を許さないのも事実だ。
さらに国内では2020年までの間、日銀の量的・質的緩和政策の出口戦略が議論されることも想定される。金利が上昇し円高圧力が強まれば、国内の輸出関連企業の業績に一定の影響を及ぼす可能性も考えられる。グローバルにみても「いまの金融緩和環境がいつまでも続かないリスクも、考慮に入れておくべきだ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸氏)との指摘もある。
企業業績の先行きも不透明だ。9日時点の日経平均のEPS(1株利益)は1125円。予想PER(株価収益率)は17倍台後半にある。
予想PERが同水準で推移し、日経平均が3万円台を付けるためには、EPSが50%以上増加しなければならない。急激な円安進行がこれ以上見込みにくい中で、さらなる成長率の積み増しは「現実味に欠ける」(国内証券)との見方も多い。
もっとも「来年以降も上昇トレンドを描くためには、890兆円に上る家計の現預金が投資の果実を得るようにならなければならない。そうすれば日経平均3万円も夢ではないだろう」(岡三証券の石黒氏)との声もある。
市場では、日経平均の2万円回復は通過点に過ぎないとの強気な見方も多い。相場格言の中には「懐疑の中で相場は育つ」との言葉もある。
(長田善行 編集:田巻一彦)