政治そのほか速
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欧米諸国では、地政学リスクの予測という新たなビジネスが活況を呈している。争いが続く中東やロシアのウクライナ介入、中国の台頭による東南アジアの緊張など、世界を見渡すとその理由は明らかだ。こうした紛争や衝突は不幸な偶然などではない。一つの歴史の終結によりシステミックリスクの時代が訪れたのだ。
町の中心から火の手があがる。混迷を深めるウクライナ問題の発端となった、市民と警官との衝突から1年がたった(2014年1月20日、キエフ)=AP
先日、大手シンクタンクのアスペン・イタリアと英王立国際問題研究所(チャタムハウス)が開催した会議に出席した。歴史学者が現在の世界情勢に与える名称を考え出そうとしているかのようにわたしには思えたのだが、「偉大なる解放」よりなお悪い名称が選ばれそうな勢いだった。このビジネスリーダーや政策立案者の会合は、栄光ある静寂のベニスで行われた。その議題内容は、冷戦後の秩序にもたらされた破断についてであった。
共産主義の崩壊後、欧米は想定の間違いから楽観的な姿勢を保った。過去25年間の介入の基礎となった想定の大部分が崩れた今、世界はより危険で予測が難しくなっている。
■超大国から降りた米国
その1つが、パックス・アメリカーナの永続性だ。米国の揺るぎない覇権主義についての息をつかせぬ論調を覚えているだろうか。21世紀を迎えるにあたり、米連邦政府は、米国が唯一の超大国として21世紀の国際関係の形成を主導することになると予想し、多くの専門家がそれに賛同した。新興国への対応は必要となるだろうが、それでも平和の保証人としての米国の立場は変わらないと思われた。
この幻想が砕け去った正確な時期について歴史学者が論争を繰り広げるのは間違いないだろう。イラクの衝撃や恐怖に続いた混沌もいいタイミングかもしれない。米国の限界は最終的にはアフガニスタンとイラクでの戦争により引き出されたが、時を同じくして中国やインドをはじめとした新興国が想定以上の早さで台頭した。テロとの戦いは軍隊の力不足を見せつけただけではなかった。アブグレイブ収容所やグアンタナモ米軍基地の問題は、米国の主導は常に善であるという考えを打ち砕いた。
米国の「衰退主義」は大げさ過ぎるかもしれない。ハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏は、「米国の時代は終わったのか」と問う新作で、経済・人口動態・地理・軍事面における米国の揺るぎない強さを指摘する。また、米国衰退の予言の多くがシェール革命によって素早く覆されたことに言及しておくことも有益だ。間違いないのは、21世紀の米国には、20世紀に用いた方法で地政学的な秩序を保つ力や意思はないだろうということだ。連邦議会での共和党の反対に対し、将来大統領になる人物は、多極的な世界の制約に関する認識において、オバマ大統領に従って続かざるをえないだろう。