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働きながら技能を学ぶ外国人技能実習生が行方不明になるケースが増えている。警察への届け出は2014年、過去最多だった13年をさらに更新する勢い。農業実習生として熊本県に来た中国人女性の場合、別の場所で働いていて警察に摘発され、帰国を余儀なくされた。なぜ、女性は追い詰められたのか。
【写真】かつて中国人実習生が働いていた養鶏場の跡=熊本県合志市、籏智広太撮影
緩やかな丘に畑が広がる地区に、養鶏場だった建物がある。熊本県合志市。一昨年の夏まで、中国人女性(当時24)が農業実習生として働いていた。
関係者の話や法廷での証言などによると、女性は東北部にある遼寧省のトウモロコシ農家の出身。中学を中退後、弟の学費や家族の生活費を稼ぐためにレストランで働いた。だが、家計は苦しかった。そんなときに実習生の制度を知り、日本へのあこがれもあって興味を抱いた。
「3年働けばもとが取れる」。現地の仲介業者にこう言われたという。保証金として5万元(約95万円)を借り、自己都合で3年以内に帰国した際には20万元(約380万円)の違約金を払う契約も結んだ。2012年8月、鶏の飼育などができる養鶏業の実習生の資格で来日した。
ところが、現実は違った。作業は、「資格外」の卵のパック詰め。月の手取りは時間外労働を除けば約7万円。未明まで残業のときもあったが、日本語の勉強をしながら働いた。
9カ月後、労働基準監督署の調査で資格外作業が発覚し、養鶏場で働けなくなった。実習生の受け入れの仲介などをする監理団体の寮でいったん過ごしたが、この団体も別の不正行為がきっかけで営業停止に。「稼ぎがないまま帰国すると借金や違約金が残る」と思い、昨年2月ごろに寮を出た。つてを頼って熊本県八代市内でホステスとして働いた。
同6月、女性は同県警に出入国管理法違反(資格外労働)容疑で逮捕された。同9月、熊本地裁で罰金刑の判決を受け、退去強制命令が出た。さらに、収容されている間に帰国への不安から床に頭を打ち付けて自殺を図った。止めに入った入管職員にけがをさせたとして公務執行妨害などの容疑で逮捕され、福岡地裁で執行猶予付きの有罪判決を受け、昨年末に帰国した。
「だまされた気がします」。女性は熊本地裁の公判で語った。同地裁判決は、技能実習生の受け入れや送り出しの体制について「問題があったことは否定できない」と指摘した。福岡地裁の公判では、女性が自ら日本語で記した上申書を提出。日本語で「日本が好きで来た。真面目に仕事したかった」と悔しさをにじませた。
女性が中国側の仲介者に払ったとされる保証金や違約金は、実習生の入国許可などを規定する出入国管理法の関係省令で禁止されている。女性を受け入れた監理団体の関係者は、女性が中国で払ったとしていることについて「知らない。借金をしてまで来る理由がありますか」と朝日新聞の取材に対して話した。
女性を支援してきた「コムスタカ 外国人と共に生きる会」(熊本市)の中島真一郎代表は指摘する。「女性は人身取引の被害者として保護されるべきだ」
■「雇用の調整弁にされている」
法務省入国管理局によると、2013年に行方不明の報告が事業所から寄せられた技能実習生(旧制度の研修生を含む)は3567人で、前年から1560人増えた。全国の警察に失踪の届け出があった数も13年が2458人と最多(警察庁調べ)。14年上半期は1717人に上り、前年同期を上回る。中国人が過半数で、ベトナム人やネパール人などが続く。