政治そのほか速
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病気なんかに負けない―。白血病という重い病を乗り越え、プロゴルファーになる夢を追いかける女性がいる。北海道苫小牧市在住の鈴木邑実(さとみ)さん(17)=高校2年=。道内のジュニア世代で手にしてきた数々の実績から一転、昨年夏から約半年におよぶ闘病生活。再びスタートラインに立った喜びをかみ締めつつ、「来年のプロテストを目指して頑張ります」と目を輝かせる。
9日、市内柳町の王子ゴルフガーデン苫小牧。ゴルフ愛好者らの中に混じって、外の空気をいっぱい吸いながら30分ほど1打1打慎重にショットを打ち込んでいく。かつて250ヤード近く飛ばしたドライバーの飛距離は今は150ヤードほど。それでも「やっぱりゴルフは楽しいなって思いました」。そう言って笑顔を見せる。
異変が起きたのは昨年6月ごろ、「飛距離が出なくなって。体もだるかった」。満身創痍(そうい)で臨んだ日本ジュニアゴルフ選手権競技・女子15~17歳の部(8月、霞ヶ関カンツリー倶楽部=埼玉県川越市)では吐き気と頭痛、傾斜を歩くたびに起きる息切れに襲われた中でのラウンド。何とか予選を突破したものの、「ぬれたタオルを絞れない」ほどまともにプレーできる状態ではなかった。「周りからは熱中症だと言われて気にもしていなかった」と振り返る。
苫小牧に戻って数日後、練習の一環で砂浜に行ったが、思うように走れない。汗の出方も違う。何かおかしい―。市内の病院で緊急入院を言い渡され、翌日札幌の病院に移って正式に宣告を受けた。急性骨髄性白血病だった。
「ショックを隠せなくて。詳しく話を聞くまでは死ぬんじゃないかと思った」と言う。そこから始まった闘病生活。抗がん剤の副作用による吐き気や食欲不振、肌のただれ、体力も次第に落ちていった。人前やインターネットの交流サイト「フェイスブック」では気丈に振る舞っていたが、心の中では泣いていた。「もうプロにはなれないんだ」と考えると、余計につらくなった。
そんな時に支えになったのは、周りの人たちの励ましの言葉や贈り物。また、白血病を克服し、国内外で活躍する選手の存在を知って「私もできるんじゃないかな」と前向きな気持ちになれた。抗がん剤治療を5回繰り返し、懸命に病気と向き合った末、今月3日に退院した。闘病に付き添った母の久美子さん(50)は「市内の病院で血液専門の先生がちょうど当直でいて、本来は取り寄せなければいけない輸血が偶然にもあった。不幸中の幸い」と話す。
「最初は歩くだけでも筋肉痛で、階段も楽じゃなかった」と言うが、表情はどこか明るい。4月いっぱいまでは安静が必要なため、現在は日常の中で体力を取り戻す懸命のリハビリ生活。練習は3日に1回程度だ。体力的に今年のプロテストは難しいかもしれないが、「できれば夏場以降の試合には出場したい」と目標を定める鈴木さん。命ある限り夢を諦めることはない。