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人工呼吸は省略してもOK-。救急車の到着前に行う心肺蘇生法について、全国の消防本部が行う講習が様変わりしている。経験がない人には難しい印象が強い人工呼吸を省略することで、とっさの場合に、居合わせた人が取り組みやすい心臓マッサージなどの応急手当てを行うケースを増やそうというのが狙いだ。(永山準)
■意外な重労働
「人工呼吸をためらう場合は、やらなくていいですから」
京都市南区の市民防災センターで市消防局が行った市民向けの救命講習で、指導員の中根光司さん(64)がこう語りかけると、参加者約20人の中には意外そうな表情を浮かべる人もいた。
代わりに中根さんが強調したのは「胸骨圧迫」、いわゆる心臓マッサージの重要性だ。救急車が到着するまでの間、1分当たり少なくとも100回のペースで続ける。できるだけ同じリズムで繰り返し、周囲に人がいれば助け合って交代することも勧めた。
見た目以上に力が必要な“重労働”。それでも、講習に参加した同市伏見区の保育園職員、藤岡利也さん(39)は「人工呼吸のプレッシャーがない分、以前より取り組みやすくなっている」と感想を話した。
■国際基準も変化
以前は「真っ先に必要」とされていた人工呼吸が必須でなくなった背景には、国際基準の変化がある。
現在、市民向けに教えられている心肺蘇生法の講習は、世界の最新の研究報告を分析する国際蘇生連絡委員会(ILCOR)が平成17年と22年にまとめた報告書が根拠となっている。これを元に、調査研究を行う日本救急医療財団と啓発を担う日本蘇生協議会が、日本で取り組みやすい方法を考案し、23年に新たなガイドラインを策定した。
以前のガイドラインでは、人工呼吸2回と胸骨圧迫30回を繰り返す方法を推奨していたが、23年のガイドラインでは胸骨圧迫を最優先とするよう変更。胸骨圧迫を中断して行う人工呼吸については、省略が可能になり、呼吸しやすい姿勢を保つ気道確保とともに後回しにされた。今年はILCORの報告書の改訂年に当たり、ガイドラインがさらに変化するかも注目されている。
■応急実施は44%
総務省消防庁によると、傷病者が倒れるのが目撃され、心肺停止が確認されたケースのうち、現場に居合わせた人が応急手当てを行った実施率は44・9%。一方で1カ月後の生存率は、応急手当てがなかった場合に比べ約1・6倍も高まる。
救急車が119番通報から現場に到着するまでの所要時間は平均8分30秒。この時間は年々延びており、その間、傷病者を目の前にした市民が協力し合い、心肺蘇生法を行えば、より多くの命が救われる。そのためには、心肺蘇生法の内容自体を単純にし、手順の正確さよりも迅速な処置を呼びかけることで、市民が「何もしない」という事態を避けるのが理想だ。
京都市消防局の担当者は「救助する人の心理的な負担を軽減するためにも、人工呼吸の省略は必要だ」と指摘する。一方で「ガイドラインは人工呼吸の有効性を否定しているのではない。できるのであれば当然すべきだ」とも話しており、救急隊員が居合わせた場合は、従来と変わらず適切な方法で人工呼吸を行っているという。