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<希少猛禽類>感電や鉛中毒の恐れ オオワシなど絶滅危惧

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<希少猛禽類>感電や鉛中毒の恐れ オオワシなど絶滅危惧

<希少猛禽類>感電や鉛中毒の恐れ オオワシなど絶滅危惧

長野県が今年、11年ぶりに改訂した絶滅の恐れがある野生生物の「県版レッドリスト(動物編)」で、鳥類では新たに、県内で越冬するオオワシが絶滅の恐れが最も高い絶滅危惧1A類に、同じくオジロワシが1Aに次ぐ1B類に追加された。通年で生息するイヌワシは旧版から1A類で、同じく大型のタカのクマタカは1B類。これらの希少猛禽(もうきん)類には、感電事故や鉛中毒の恐れがあることが近年、判明した。食物連鎖による生態系ピラミッドの頂点に立つ彼らの現状を探った。【武田博仁】

 レッドリスト改訂委員会の脊椎(せきつい)動物専門部会委員を務めた県環境保全研究所の堀田昌伸主任研究員によると、旧版になかったオオワシとオジロワシの追加は「以前よりも情報が集まり、越冬期に極めて少数の生息が確認されたため」という。

 海や湖で魚などを狩るため「海ワシ」と呼ばれる両種は冬に北海道で多く見られるが、ごく少数が本州を南下する。県内では諏訪湖などでの越冬例が知られるようになった。

 1999年から諏訪湖で越冬している20歳のオオワシの雌は「グル」の愛称を持ち、地元野鳥ファンに親しまれている。他のオオワシやオジロワシが飛来することもあるが、湖を縄張りとするグルに追い出されるという。

 日本野鳥の会諏訪会長の林正敏さん(71)は「オオワシは冬は諏訪湖に定着している。もしグルがいなくなっても、それに代わるワシが湖を縄張りにするだろう」とみる。

 オオワシなどの生息は県内に彼らが過ごせる一定の自然環境がある証拠だが、一方で、生息に脅威となる要因が新たに分かった。

 2012年春、諏訪市の山中で高圧電線の鉄塔に止まったクマタカ2羽が相次いで感電死する事故が起きた。いずれも鉄塔上部の落雷による設備損傷を防ぐ器具に接触したためとみられ、野鳥の会の要請で、中部電力が現場の鉄塔に接触を防ぐ対策を施した。

 ワシやタカは獲物探しや休息のため、鉄塔など高い場所によく止まる習性があり、感電事故は他の地域でも起きる可能性がある。

 この事故後、彼らにとっては別の深刻な脅威も分かった。採餌による鉛中毒だ。林さんが感電死したクマタカ1羽の胃の未消化物を調べたところ、大量のシカの毛を発見。駆除されたシカを食べたらしいと気づいた。

 県内では現在、激増したシカの捕獲が進められており、13年度には全県で約4万頭が捕獲された。だが、銃による駆除には鉛製の銃弾が使われており、撃たれた死骸の多くは山中に放置されている。それを猛禽類が食べると鉛中毒になる可能性があるという。

 「ワシやタカは鋭いくちばしで銃弾が入った傷口から肉をえぐり取って食べるので、鉛の破片も口に入る。感電死したクマタカは鉛中毒だったかもしれない」と林さん。

 実際に北海道では、撃たれたエゾシカを食べたことでオオワシやオジロワシが鉛中毒死する事例が90年代後半から多発し、問題化した。道は00年代からシカ猟での鉛弾使用を禁ずるなど規制を始めたが、順守されておらず、今も中毒死があるという。

 林さんは「シカの大量捕獲が続く県内も、猛禽類が死んだシカを食べると考えられる」とし、県内でも鉛弾の規制を求めている。

 ◇イヌワシは繁殖率低下

 オオワシなどの「海ワシ」に対し、山にすむため「山ワシ」と呼ばれるイヌワシは全国的に繁殖率が低下し、数が減っている。

 日本イヌワシ研究会が今年3月に発表した81~13年の33年間の調査では、つがいの数は80年代の7割に減り、つがいの繁殖成功率も大幅に低下。個体数は全国で500羽程度と推定し、「存続の危機にある」と訴えている。

 県と長野イヌワシ研究会の調査によると、県内で確実に生息が確認されているつがいの数は06年の22から、13年には19に減少した。県は06年度から保護回復事業に取り組んでいるが、「繁殖状況は悪化している」と推定している。

 研究者は個体数減少の要因に、ノウサギなど餌動物の減少▽営巣地周辺の開発・工事や人間の接近▽人工林の放置や里山の荒廃による狩り場の消失--などを挙げている。

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