政治そのほか速
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
人間だけが何故こんなに大きな脳を持っているのか――。マウスを使った実験で、その秘密が明らかにされようとしている。DNAの一部を人間の塩基配列に書き換えたマウスの脳が巨大化したのだ。
その他の画像はこちらから
■人間のDNAを注入したマウスは脳が増大
人間とチンパンジーの遺伝子情報(ゲノム)は驚くことに98%が同一である。にもかかわらず、平均的な人間の脳が約1300gあるのに対し、チンパンジーやゴリラの脳は350~500g程度しかない。どうしてこうも脳の容量が異なるのか……。
2月、米デューク大学の研究チームは「HARE5」と呼ばれる遺伝子配列に着目し、受精まもないマウスの胚に人間のHARE5とチンパンジーのHARE5を植えつける実験を行なった。すると人間のHARE5を植えつけたマウスは、チンパンジーのHARE5を植えつけたマウスよりも脳が12%大きくなったということだ。
人間とチンパンジーのHARE5もほぼ同一なのだが、僅かに16塩基対の違いがあり、この違いが脳の大きさに影響していることが濃厚になったのだ。もちろん脳の容積が増えたからといって、それが高い知能に直結するわけではないだろうが、今回の研究が脳科学や医学などの各分野に大きな影響を与えるものであることは間違いない。
■しゃべるペットが誕生する日が近い?
今回の研究以外にも、近年マウスの脳を使った様々な研究が活発に行なわれている。
米ロチェスター大学メディカル・センターの研究チームは、人間のグリア細胞を生後間もないマウスの脳細胞に移植した実験の詳細を昨年12月に「The Journal of Neuroscience>」で発表した。移植1年後、マウスに移植された人間のグリア細胞はマウスの細胞を押しのけて増殖し、移植時に30万個だったグリア細胞が1,200万個にまで増えたということだ。
この研究を特集した「New Scientist」の記事で研究を主導したスティーブン・ゴールドマン博士は、この実験は単純に動物に新たな能力を与えるものではないとしながらも、「人間のグリア細胞がマウスの神経細胞ネットワークの機能を向上させたことは確かです」と言及している。
また、言語能力を司っているといわれる人間の「FOXP2」遺伝子をマウスに植え込む「実験」も、マサチューセッツ工科大学のアン・グレイビエル博士らの研究チームによって昨年行なわれている。研究によれば、人間のFOXP2を植え込まれたマウスは、明らかに学習能力やシナプスの伝達性能が向上したということだ。
この研究が第一に意図するものは、決して動物の能力向上ではなく、人間の言語障害の解明と治療法を探るものである。しかし、これらの研究で生まれた様々な高知能マウスは単純に興味深い存在だろう。このまま研究が進められていけばいつか“しゃべるペット”が誕生するのだろうか? あるいは人間の知力を超えた動物によるリアルな「猿の惑星」の事態を迎えることにも!? ……等々、いろいろと想像(妄想)は膨らむばかりである。
(文=仲田しんじ)