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米国「マサチューセッツ工科大学(MIT)」はノーベル賞受賞者を81名も輩出した全米指折りの名門校であるが学業だけでなく遊び心のある授業も多いのが特徴である。約60年前には創造工学科で「メタニアン」と呼ばれる架空の宇宙人に向けた輸出品の商品開発という実にユニークな授業が行われ、その内容を当時の「Popular Science」が紹介している。学生たちはどのような製品を設計したのだろうか――。
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■想像力がモノを言う? 鳥類宇宙人"メタニアン"が求める製品を作れ!
今から63年前、1952年10月発行の「Popular Science」ではマサチューセッツ工科大学(MIT)・創造工学科のジョン・アーノルド教授が行なったユニークな授業を紹介している。
アーノルド教授が掲げる『教育は厳粛であり、ひたむきに努力すべきであるが、創造性を促進する哲学を持ち続けてほしい』という教育理念を反映した「アークトゥルス・ケーススタディ」と呼ばれる授業で、内容は『友好的な関係にある「アークトゥルス第四惑星(アークトゥルスIV)」で生活している鳥類を祖先に持つ宇宙人"メタニアン"に輸出する製品を設計する』というものだ。約20名の学生たちの柔軟な発想のもとで数々の"メタニアン"向けの道具や家電製品が設計された。
まず想定された「アークトゥルスIV」は地球と比べ11倍以上の重力がある惑星であり、水の変わりにアンモニアが存在し、大気はメタンでできているという地球とはまったく異なる惑星である。
またそこで暮らす"メタニアン"と呼ばれる宇宙人は、鳥類の子孫であるため"くちばし"と、かつて翼があったなごりから長い腕を持ち、軽量の穴の開いた骨で形成されている。そして羽で覆われた体表とX線視力を持つ第三の目を持ち、足は"ひずめ"状になっている、と外見的なことまで細かく想定されたのだ。
学生たちはこれらの情報を元に鳥類宇宙人"メタニアン"とのコミュニケーションや輸出方法、想定される市場調査なども行い、多くのアイディアから"メタニアン"向けの製品を設計していったという。
「細部まで体にマッチするように設計されたプラスティックとマグネシウムの合金ラウンジチェア」や、鳥類体形の彼らが安定して座れるよう「乗馬のように脚をかけ、またがりながら座るバースツール」など、独創的な製品が数多く設計され、他にも「孵化する前の卵を温める携帯用の孵卵器」や「農業機器」など家具のみならず家電など、その数は100ページにもおよぶという。
■突拍子もないことでもそこには大きな可能性が!
"マサチューセッツ銀河貿易会社"と名乗り授業を楽しむ学生の姿を見て一部の教師からは「ばかばかしい」と非難されることもあったが、アーノルド教授は固定概念にとらわれない"自由な発想"こそが今後の設計者や開発者を成長させるために必要なことであると考えていた。事実「アークトゥルス・ケーススタディ」は教授自身も大いに楽しんだという。また教授の下で学んだ卒業生たちは現在も様々な分野で活躍しており、成功を収めている者も多いそうだ。
さすがMIT、日本の教育文化とは違い余裕さえ感じるほどである。「宇宙人へ製品を輸出する」という小説のような話だとしても、その想像力から思いもつかないような製品やサービスが生み出される可能性が秘められているということだろう。
現在も多様な方面で活躍する卒業生たちは数多くの会社を設立し、約300万人もの雇用を生み出している。MITを「国家」と想定するとそのGDPはオーストラリアを超え世界第11位となるということだ。現在も未知なる可能性を秘めた学生たちが数多く学んでいるが、今後MIT卒業生からどのような製品が開発されるのか、実に楽しみである。
(文=遠野そら)