政治そのほか速
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2月は逃げる、3月は去る。まさにその言葉通り、3月ももうあっという間に半ば(原稿を書いている現在)。光陰矢のごとし、時は金なり。年々、体力が衰えているせいか、月日が異常なスピードで過ぎてゆくのを感じます。一日にひとつの用事をするのがやっとになってきている今日この頃。先人の金言もなかなか馬鹿にはできません。あ、確定申告もしなくては。あと4日くらいしかないのにすっかり忘れてた! 夏休みの宿題は8月28日ごろから取りかかるという性格がこんな年になってまでも。皆様は無事にお済みでしょうか?
今回は、こんないい加減な私と真反対にいるようなプロフィールの田畑智子さん(以下、敬省略)。まだ若いのに、なぜか昭和感たっぷり。最近は、ドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ系)の白雪さん役など今風の役も演じてますが、やはり昭和の女を演じさせるとリアル。出てきただけで情緒溢れる空気が漂い、場もビシッと締まる数少ない女優の一人ではないかと。
この緊張感は一体どこから? 調べてみると数百年も続く京都・祇園の老舗料亭『鳥井本』に生まれ、家の中では京言葉と正座を常に求められる生活だった――という軽く身震いさえ感じさせるようなことがウィキペディアに載っていました。ウィキペディアは、結構いろんな人が好きに書き込めるらしいので、どこまで信憑性があるか定かではありませんが、実話なら凄いです。
京の凄味。老舗の迫。昭和をも越え、大正、明治と遡って朝ドラになりそうな話。家で常に正座を求められる生活。脚にあっという間に支障が出そうで、太ることすら許されない生活(想像)。正座話が長くなりすぎてすみません。しかし元芸妓の祖母や両親から厳しくしつけられたため、時代劇出演時は、着付けや所作にまったく困らなかったそう。実際、ミュージカル映画『舞妓はレディ』で確認したら、お酌する手つきが本当に自然で美しかったです。指の曲げ方、揃え方、見倣いたい限り。
相米慎二監督にしごきにしごかれまくった映画『お引越し』の撮影時はわずか11歳。実家の料亭にたまたま来ていた相米監督に、声をかけられオーディションを受け、候補者8000人以上の中から見事合格。が、引っ込み思案な本人はあまり乗り気ではなかった『お引越し』。撮影中に、逃げることばかり考えていた『お引越し』。山の中を一人で歩き回された『お引越し』。その『お引越し』で数々の新人賞を総なめできたのも、泣く子も黙る相米慎二監督の厳しいしごきに耐えられたのも、家での躾による賜かもしれません。
美しい発声とはんなり感。このはんなりな存在感に対抗できるのは『利休にたずねよ』の海老蔵ぐらいしか!? 名家同士。ちなみに『お引越し』はファンも多く、私もこれぞ映画の中の映画だと思います。彼氏と自分の妹と三角関係のような感じになる『さんかく』も、『くちづけ』も、『血と骨』も、彼女が出演しているからなのか、偶然なのか、深い。間違って深みにはまりこんで、しばらく出られなくなるくらいに。彼女の出演作を追いかけたつもりが、映画の醍醐味を必要以上に味わう羽目になり、ぐったりです。
30歳を機にヌードになった彼女。『ふがいない僕は空を見た』で見せた彼女の裸は、色白できめ細かい肌、華奢な背中が清潔感たっぷりで、期待以上のエロスが。
いつかのテレビで関ジャニ∞・渋谷すばるの大ファンだと言っていた彼女。ジャニーズの中では数少ないように思える歌担当(他はkinkiの堂本剛か?)の渋谷すばる。あの熱唱力は、どこか昭和につながる気が。あまりの熱唱ぶりに一瞬驚くけど、真摯に歌う姿は好感度大。平成の女優なのにどこか昭和な女力を持つ田畑智子が、何か昭和を思わせる歌力の渋谷すばるに惹かれるのは、嗚呼、素晴らしきこと哉。
合コンの席などで「私、意外と古風なんです」なんて言う人が今でもいるならば、一度、田畑智子をじっくりと見て欲しい。京の老舗料亭で生まれ育った真の古風が、躾の正しいあり方が、彼女の所作のそこかしこに溢れている。芯が一本通ってる女の佇まいが学べそうな気がします。
あ、でも『ファーストクラス』の白雪さんだけは、少し別。思いっきり現代的。しかし、見始めたが最後、いろいろな締切前で追い詰められる中、面白すぎて全話一気見してしまいました。悲惨。時間のあまりない方は『ファーストクラス』には手を出さないよう、要要要注意です。
■阿久真子/脚本家。2013年「八月の青」で、SOD大賞脚本家賞受賞。他に「Black coffee」「よしもと商店街」など。好きな漢は土方歳三。休日の殆どを新撰組関連に費やしている。