政治そのほか速
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
各地の小中学校や病院へうかがってコンサートを開いています。音楽の楽しさを伝えられたらと、15年前に始めて100回以上になりました。リクエストがあれば、アニメの「妖怪ウォッチ」の曲も弾きますよ。子供たちは身を乗り出して音を体で感じてくれるんです。
私自身が音楽の楽しさを実感したのは、大阪府豊中市立克明小3年の時です。当時20歳代前半だった出川宏子先生に音楽の授業でリコーダーを教わりました。初回は「シ」の音を吹くだけで終わり。先生は「来週の授業に特別ゲストをお招きします。ステキな笛の音を聞かせてくれるので家では笛を吹かないで我慢してください」と言うんです。
1週間後。バロック風のクラシック曲が流れる中、シックなベレー帽をかぶり、スモックを着て登場したのは、出川先生でした。「なんや」という声も漏れました。でも、先生は全く動じず、私たちの周りを歩きながらリコーダーを吹き続けるんです。すごく格好良くてわくわくしました。私は3歳からピアノを始めていたので先生の音楽が「本物」だとわかります。音楽に興味のない男の子たちが次第に笛の音に引き付けられていくのはマジックのようでした。
引っ込み思案で学校も休みがちだった私は、ピアノの仕事をするなんて思っていませんでした。でも、桐朋学園大の1年生の時、レコード会社からデビューのお話をいただいて、あの授業を思い出し、「音楽を楽しんでもらうことは、できるかもしれない」と、決心できたんです。学校コンサートや、東日本大震災の被災地にピアノを届ける活動を始めたのも同じ思いからです。あの授業が今の私を支えてくれていると感じます。(聞き手・広中正則)
(2015年1月22日付読売新聞朝刊掲載)