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「未完の大器」という呼び名が、これほどまでしっくりくる選手が他にいるだろうか。アーセナルのMFアブ・ディアビのことである。
身体能力とスキルの両方に恵まれ、「パトリック・ヴィエラ2世」と言われてきた。だが、なにしろケガが多い。3月6日付けの『デイリーメール』は、彼の「負傷の歴史」を紹介するとともに、現行契約が切れる今シーズン終了をもって、ついにクラブがディアビ放出に踏み切ると報じた。
オセールで頭角を現すと、2006年1月に、19歳の若さでチェルシーとの競合を制したアーセナルに加入した。
ピッチに立てば、パワフルかつしなやかなプレーで観る者を魅了する。だが、その「ピッチに立つ」ことができない。
同紙によれば、ディアビは2006年1月13日のアーセナル加入後、大小様々「42回」も負傷している。在籍3339日のうち、離脱期間は「1554日」。週に直せば222週間。年に直せば約4年の計算で、在籍9年間のうち、半分近くは稼働できない状態ということになる。
それでも、09-10シーズンにはプレミア29試合に出場し、南アフリカ・ワールドカップでフランス代表の一員としてプレーした。12-13シーズン序盤にはミケル・アルテタ、サンティ・カソルラとのトリオで中盤に安定をもたらしたこともあった。
瞬間の輝きを振り返れば、ヴェンゲルが10シーズンにわたって“ガラスのMF”を手元に置いてきた理由もよくわかる。
だが、やはりフルコンディションが長く続かない。13-14シーズンは膝のケガで出場は5月のプレミア1試合だけ。今シーズンもふくらはぎの負傷で出場機会は9月23日のリーグカップ・サウサンプトン戦のみに限られている。
そのサウサンプトン戦後、ヴェンゲルはディアビを攻撃的な位置からアンカーにコンバートするプランを明かしていた。「守備的MFに必要な素質が全て備わっている」と話すヴェンゲルは今もディアビのマルチな才能を信じ、「彼が戻ってこられるなら、ここに残したい。私は常に彼を信じている」と、契約延長の望みを語っていた。
在籍10シーズン目。意外にもセオ・ウォルコットと並ぶトップチーム最古参であり、懸命にリハビリをする姿勢や、ドレッシングルームでの明るい振る舞いもチーム内では評価が高い。
しかし、一方でヴェンゲルは「フットボールにおいて、最も重要なのは健康だ」とも話す。いくら愛されていても、ピッチに立てない選手を守り続けることは、指揮官にとってもクラブにとっても難しくなってしまった。…