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脱北者に生きる力

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脱北者に生きる力

 「たくさんの人たちが、私の未来のために力を貸してくれた」。北朝鮮を脱出し、3年半前に「北朝鮮難民救援基金」の支援で日本に来た女性(43)は穏やかに話した。

  • 東京都内の2DKの部屋で、娘と遊ぶ脱北者の女性。「北朝鮮と比べ、日本は法律や社会の仕組みがしっかりしていて、安心して暮らせる」と話す。早く生活を安定させ、次に来る脱北者を支えたいという
  •  

      外務省によると、北朝鮮から逃れ、日本で暮らす脱北者は約100人。女性もその一人で、父親が帰還事業で北へ渡った後に生まれた。夫と共に、まず中国側に脱北し、数年間潜伏していたところ同基金の加藤博理事長(69)に助け出された。現在は、患っていた肝炎の治療を受けながら、内装業の夫、日本で生まれた娘(2)の3人で東京都内に暮らす。ネットショップで収入を得ようと、法律などを勉強中だ。「この子のように私たちも成長し、しっかりと日本で生きていきたい」と娘を抱きしめた。

      脱北者の多くは日本での生活に慣れるまで苦労する。昨年の日朝協議では拉致被害者や帰還事業で北朝鮮へ渡った人などの調査が合意されたが、「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の山田文明代表(66)は「子供や家族なども含め帰国を望んでいる人たちは多いはず。大勢の帰国が実現したら支援体制が重要になる」と指摘する。

      脱北者に日本語の指導や仕事の紹介などを行う同会が2013年に大阪近郊で始めたのが農園の運営だ。4棟のビニールハウスではイチゴが赤く色づき、次々収穫されていく。脱北者たちは農作業だけではなく、販売価格を考えたり、直売所で接客を学んだりしている。配給で生活する北朝鮮では、働いても給料をほとんどもらえない反面、結果も厳しく求められなかった。ここで働く女性(63)は「農園の仕事を通して日本での働き方を早く覚えたい」と話した。

      写真と文 竹田津敦史

    • 大阪近郊のビニールハウスでイチゴを栽培する脱北者

        

      • 作業所では収穫した水菜を包装する。農園は、言葉の問題で仕事探しに苦労する脱北者たちのよりどころになっている

          

        • 日本に来て10年になる脱北者の榊原洋子さん(65)は、「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の事務所で、資料の翻訳を手伝う。自身の経験から「ずっと面倒を見てもらう必要はないが、自立の手助けは必要だ」と話す。左は山田文明代表(大阪府八尾市で)

            

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