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遺伝子検査ビジネスで急成長するアメリカのベンチャー企業「23アンド・ミー(23andMe)」。前回は、その簡単な検査システムや多彩なサービス内容、そして衝撃的な価格の安さについて紹介した。
だがしかし、落とし穴が待っていた。2013年11月、FDA(米国食品医薬品局)は、23アンド・ミーのDTC(消費者向け)遺伝子検査ビジネスに警告を発し、「唾液採取キットおよび個人ゲノムサービス(PGS)」販売停止を求めたのである。その真意は何だったのか?
販売停止の理由は明快だ。唾液採取キットは疾患の診断・予防などを目的としており、連邦食品医薬品化粧品法で規制される医療機器に相当し、市販前承認を受けていないため、利用者の安全が担保できないという点だった。
FDAは、警告書の中で遺伝子検査の結果が間違っていた場合や、検査結果が消費者に適切に理解されなかった場合は、深刻な問題が生じると懸念した。
がん関連リスクの検査結果が偽陽性(低リスクなのに高リスクと判定)の場合は、消費者を不必要な予防的な手術、化学療法や集中的な検査などに誘導する恐れがある。逆に偽陰性(高リスクなのに低リスクと判定)の場合は、病気のリスクを誤認させてしまう。
さらに、薬物応答性については、検査結果を信じた消費者が医薬品の用量を自分で変更するリスクや、服用を中止するリスクがある。脳梗塞を予防する抗凝固薬の効能結果を誤って伝えれば、血栓による塞栓症、出血による疾患、死亡などの重大な事態につながる恐れがある。
2013年12月30日付けのThe New York Times紙によれば、ある利用者が23アンド・ミーを含む3社のDTC遺伝子検査サービスを併用したところ、リウマチ、乾癬、冠動脈性心疾患などの疾患罹患リスクの結果は各社で異なり、2型糖尿病では高リスクや低リスクの範囲が企業によってまちまちだったという。
また、同記事は、検査結果が無意味であったことを理由に23アンド・ミーに対して集団訴訟が提起されたが、同社の支援者がFDAの警告に異議を唱える誓願書を提出したと報じた。この集団訴訟は、DTC遺伝子検査ビジネスの行く末に大きな波紋を投げかけた。
医学的な検査結果の提供を停止
では、FDAはどのような根拠から警告を発したのか? それは、SNP(スニップ/一塩基多型)に基づく個人の形質や疾病罹患性の予測は、検査精度の信頼性の点で重大な問題があると判断したからに他ならない。…