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JR 足りない危機感

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JR 足りない危機感

 今年の元旦、釧網線の線路脇でエゾシカの轢(れき)死体を発見した。すぐ近くではオオワシとオジロワシが狙っているのを確認した。ワシの列車事故が懸念されたため、その場でJR北海道に通報してシカの完全撤去をお願いした。

  ところが、翌日になっても同じ場所に放置されたまま。5日後にわずか数百メートルしか離れていない場所で、列車にはねられたオジロワシが発見された。線路脇に横たわっていて足腰が全く立たない状態。喉元は大きく膨らみ、口にはシカの体毛が付いていた。線路を起点に新しいソリの跡が雪上に伸びており、たどるとシカの死体が発見された。列車に轢(ひ)かれたシカを完全に撤去せず、わずか10メートルほど線路から離しただけだった結果、ワシがおびき寄せられて列車事故に遭ったらしい。起こるべくして起こった事故だった。

  JR北海道によると、今回のオジロワシ負傷個体は、シカ轢死体処理の巡回中に発見された。同社の轢死体処理作業の流れは、〈1〉運転士が動物を轢いたことを確認〈2〉運転士より担当部署に連絡して死体を線路脇に放置〈3〉適宜、保守作業員が回収――となっているという。ただ、今回のシカの轢死体については運転士から担当部署への報告はなかったそうだ。ルールの不徹底さが明るみに出た。

  • 線路脇に横たわるひん死のオジロワシ=斉藤さん提供

      線路脇に放置されたままのシカの轢死体は、廃棄物処理法でいう不法投棄に当たるのではないか? 線路内や線路近くに自由に立ち入りできれば緊急回収に協力できるが、人身事故やダイヤへの影響を考えると一般人としては通報しかできない。歯がゆいばかりだ。

      運転士からはオジロワシをはねたことの連絡もなかったようだ。保護されたオジロワシは脊椎と骨盤を骨折しており、集中治療を施したが、一週間後に死亡した。ワシの列車事故は、シカの死体を適切に片付けなかったことに起因する。「人災」によって絶滅の危機に瀕(ひん)した野生動物が次々と死んでいる現状がある。

      JR北海道にはもっと危機感を持ってもらいたい。今回のような事態が続くなら、シカ轢死体の速やかな完全撤去を徹底するために何らかのノルマを課すべきだと主張するのは過激だろうか?

      【斉藤慶輔】 猛禽(もうきん)類医学研究所代表。獣医師。環境省希少野生動植物種保存推進員を務め、オオワシの保護活動で知られる。釧路市在住。49歳。

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