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【AFP=時事】欧州では、20日に起きる皆既日食によって太陽光発電が一時的にほぼ全て停止する見込みで、電力各社はこの「前例のない」試練への備えを進めている。
【特集】知られざる太陽の姿
欧州送電系統運用者ネットワーク(European Network of Transmission System Operators for Electricity、ENTSO-E)はこのほど、「問題が起きるリスクを完全には排除できない」と発表。現在の太陽光発電量は、欧州で最後に日食が観測された1999年当時の発電量の100倍に達している。
ENTSO-Eは「皆既日食は以前にも起きているが、光起発電設備の導入増加を受け、適切な対応策を取らなければ問題発生リスクが深刻化する恐れがある」「欧州電力システムの安定した運用に、日食関連の影響が及ぶことが予想されるのは今回が初めてだ」と警告している。
皆既日食は、20日午前9時から正午にかけ、ポルトガルからフィンランドに至る欧州全土を横断する。午前中に日食が太陽を隠すまでの時間が快晴の場合、日食によって発電量が3400万キロワット(kW)急減する恐れがある。これは、中規模の従来型発電所80か所分の発電量に相当する。皆既日食が始まるまでの空が快晴の場合、太陽光発電量の減少率は最大75%に達する可能性がある。
欧州各国の送電網を運用する電力各社は、太陽光を発電源とする電力が一瞬にして失われる事態に備えるため、前例のない危機管理計画の導入を図ってきた。
■「前例のない試練」
最も大きな影響を受ける可能性が高い国はドイツだ。同国では、太陽光による発電能力が4000万kWで、2014年の電力消費量の18%が太陽光発電で賄われた。この他、日照量が多いイタリア(太陽光発電能力2000万kW)やスペイン(同670万kW)にも大きな影響が及ぶ恐れがある。フランス(同570万kW)にも大きな太陽光発電産業がある。
欧州全土の電力各社は、日食当日への対応チームの強化を進める他、一部世帯で停電が発生する事態を回避するための特別措置を導入。通常運用時の電力需要増加や電力生産減少を補うのに使われる1日の予備電力を増強している。例えばフランスでは、予備電力を通常の100万kWから170万kWに増やす予定だ。
また、太陽光発電以外の発電施設も待機態勢を整えている。例えばフランスの水力発電ダムなどは、必要に応じて迅速に発電を行えるようになっている。ドイツでは、エネルギー・ミックスにおける太陽光の部分の減少を補うため、天然ガスと石炭による火力発電で電力生産量を増やすことが可能かもしれない。
ENTSO-Eは「今回の皆既日食は欧州の電力システムにとって前例のない試練となる」と結論付けている。【翻訳編集】 AFPBB News