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人生楽しむ「怪人」…マカフィー創業者

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人生楽しむ「怪人」…マカフィー創業者

人生楽しむ「怪人」…マカフィー創業者 

愛人と逃避行

  • 「親はなくとも子は育つ」とは、よく言ったもの。燦然と輝くマカフィー本社ビル
  •   マカフィーという名前を聞いたことがあるでしょうか。

      世界8位のウィルス対策ソフトの名称です。1987年に、ジョン・マカフィーが設立したマカフィーアソシエイツによって開発されたもの。その後マカフィーアソシエイツは合併・買収を繰り返し、2010年に半導体大手のインテルによって買収されました。買収金額は約77億ドル(当時のレートで約6500億円)。現在の本社はシリコンバレーのサンタクララにあります。

      ちなみに、全くの余談ですが、サンタクララにはその名もサンタクララ大学という学校があり、女子サッカーが強いことで知られています。そして、イギリスの映画「ベッカムに恋して」で主人公の女の子がサッカー奨学金をもらって留学する先がここという設定です。本当に関係ありませんが。

      さて、マカフィー社。今や押しも押されもせぬ大企業なのですが、その創業者のジョン・マカフィーは1994年にマカフィー社を離れて以来、様々な奇行を繰り返してきており、最近はMDPVという麻薬の精製に注力しているという噂(うわさ)が流れていました。麻薬ユーザの間で有名なオンラインフォーラム「Bluelight」で、Stuffmongerというハンドルネームで多数のポストをしていて、「Stuffmongerは自分だ」と自ら認めてもいます。ただし、「あのフォーラムで書いたことは全部ジョークだよ」とも言っているようですが。

      そして、ベリーズという中米の小国に住んでいたジョン・マカフィーに、この11月、隣人のアメリカ人ビジネスマンを殺害したという容疑がかけられます。マカフィーは姿を消し、20歳のガールフレンドと隣国グァテマラに逃げたところで、同行していた雑誌記者が写真をオンラインで公開したところ、その写真に入っていた地理情報で場所が判明しお縄に。逃避行に関しては、記者を同行させたのみならず、自らもブログに様子をアップするなど、そのエキセントリックぶりは余さず世に知られるところとなりました。

      (しかし、ソフト会社のファウンダーが地理情報入りの写真のアップロードを同行者に許すとは…。コンピュータのセキュリティ対策は、ウィルスなどの技術的なものより、人間のミスを防ぐ方が大事だとよく言われますが、まさにその通りです。)

     

    ハンググライダーとの出会い

      グァテマラの警察で拘束されたマカフィーは、心臓発作のふりをして担架に乗せられて病院へ。(後ほど本人自ら「あれ仮病だから」と公表)。

      そしてグァテマラからアメリカへの出国を許され、現在はフロリダの高級ブティックホテルでベリーズ時代の20歳のガールフレンドの渡米を待っているところです。その一方で、ナイスバディな別の若い女性の肩を抱いて歩いている写真もニュースサイトに。67歳、ジョン・マカフィー、健在なり。

      ちなみに、そもそも彼がベリーズにいた理由は、事故の賠償金請求から逃れるためでした。2002年にマカフィーは22歳の(当時の)ガールフレンドとエンジン付きハンググライダーに出会います。大いなる興味を持ったマカフィーは、この乗り物を使ったアドベンチャーツアーの会社をはじめましたが、ツアー中に死者が出てしまい、遺族から賠償金500万ドルを要求されたのでした。この訴訟を受け、マカフィーはアメリカ国内の資産を全て売り払い、ベリーズに逃れてしまったのです。

      なんだか大変な人生ですが、マスコミで出てくる彼の写真はずいぶん楽しそう。凡人には中々想像ができませんが、本人は楽しいのでしょうか、やっぱり。

     

    際立つ堅実な会社との乖離

      さて、かように数奇な人生のジョン・マカフィーですが、その創業者のとんでもなさぶりと、彼の創業したマカフィー社の堅実な成長との乖離(かいり)ぶりは、とてもシリコンバレー的、というかアメリカ的なものを感じます。

      最近でこそ、会社は創業者がトップをつとめるのが最強、という意見が強くなって来ていますが、そもそも、ベンチャーキャピタルと株式公開を基本としたシリコンバレーの起業の仕組みは、事業が創業者という個人から離れ、別のものとして育って行くことを促進するものです。ベンチャーキャピタルからの投資を受けた時点で、創業者といえども社外取締役の監視下に置かれ、降格されたり首にされたりすることもあります。

      ゼロから何かを生み出すには、創業者の特異な「なにか」と運の両方が必要ですが、その創業者が必ずしも10億円のビジネスを100億円にし、1000億円にしていくのに適しているとは限りません。しかも、その特異な「なにか」を持った創業者は、年を取るにつれビジネスに適さないほどにエキセントリックになっていくことも時としてあります。そんな時に、事業を創業者か切り離して成長させて行くことができる、というのは割と大事なことのように思うのでした。もちろん日本でも事業と創業者を切り離した例がないわけではないのですが、システマティックにそれを推進するかどうか、というところは違うかと思います。

      ちなみに、ウィルス対策ソフトには、マカフィー同様に、最初に作った人の名前がついたノートンというのもありますが、今から5年くらいすると記憶が混乱して「あのベリーズにいた変な人ってノートンだっけ?」と思ってしまう可能性が大いにあります。すみません、ノートンさん、悪気はないんです、と今のうちに心の中で謝っておきたいと思います。

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