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IT機器の発達で、発達障害の子どもの学習機会が広がっている。
この夏も東京都内で、全国の発達障害などの小中高校生を集めた学習指導が行われた。こうした子がテストでIT機器を使うと、成績が上がるという検証結果も出ており、入試での使用をどこまで配慮すべきかが、議論になりそうだ。
今月6日、東京都目黒区の東京大学先端科学技術研究センター。読み書きに困難を伴う小中学生9人がパソコンなどを使い、国語のテストに取り組んでいた。
問題文を選択すると、音声ソフトが読み上げてくれたり、解答を手書きで記入する代わりにキーボードで入力できたり。「こうしたテクノロジーは、読み書き障害(ディスレクシア)の子どもにとって大きな助けとなり、学ぶ機会の保障にもつながる」と、同センター学術支援専門職員の新谷清香さんが説明する。
東大は日本マイクロソフト(東京都)などと協力し、障害のある子の進学を支援する「DO―IT Japan」プログラムに2007年から取り組んでいる。入試でも活用しやすいよう、今年は指定した学年の漢字しか変換できないソフトなどが準備された。この日、IT機器を使った「配慮ありテスト」を受けた児童たちはその直前、紙と鉛筆の「配慮なしテスト」も受けていた。難易度は同じだが、「配慮あり」の得点が「なし」の2倍だった子もいた。
人間関係を築くのが困難な広汎性発達障害の男子(中学1年)は、鉛筆で書くのが遅く、漢字も苦手だ。学校の定期試験では時間延長の配慮を受けているが、パソコン使用は認められていない。「キーボードを使うと、たくさんの文章をすばやく書き込むことができた」と感想を語った。
アスペルガー症候群で読み書きに困難がある女子(小学4年)は「読み上げソフトがあると助かる。学校のテストでも使えればいいのに」と話した。
このプログラムにかかわる近藤武夫・東大准教授によると、発達障害の生徒の場合、学校の試験や高校、大学入試で配慮を認められないケースが多いという。「授業を録音したり、黒板を撮影したりするだけでも違う。それなのに、他の生徒との公平性などの理由で許可されないケースが多い」と指摘する。
政府は今年、国連障害者権利条約を批准した。16年春からは障害者差別解消法が施行され、教育場面での合理的配慮の提供が義務づけられる。大学入試センター試験では11年から、発達障害の生徒も受験での特別措置を申請できるようになった。審査に通れば、試験時間を1・3倍に延長する措置などが認められる。
近藤准教授によると、来春のセンター試験では、プログラムに参加した読み書き障害のある高校3年の男子が、問題文を代読してもらう配慮を申請する予定。これまで認められた受験生はいないが、「この生徒は、高校の定期試験でも代読の配慮を受けている。大学入試センターの判断が注目される」と近藤准教授は話している。(保井隆之)