政治そのほか速
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全国の大学が学生の学習時間を増やそうと悩む中、具体的なノルマ時間を前面に押し出して、授業の工夫や学習スペースの確保などを進める玉川大学(東京都町田市)の取り組みに注目が集まっている。
脱「レジャーランド」を追求する、その改革の現場を取材した。
4月末、「異文化理解と教育」の授業。学生16人が3、4人のグループに分かれ、討論を始めた。
授業に討論を取り入れる大学は珍しくないが、この授業が違うのは、事前に個別に出された課題をしないと参加が難しい高度な内容になっていることだ。例えばこの日の課題は、「外国籍の子どもなどが学校で遭遇する困難について書かれた3年以内の新聞記事や資料の要約と分析」。討論結果はグループごとにまとめて発表するため、課題を忘れると、他のメンバーに迷惑がかかる。「毎日、必死で勉強する」と4年生の女子学生(21)。3年生男子(20)も「空き時間の活用がうまくなった」という。
こうした授業は、同大が昨春から始めた「単位の実質化」の一つだ。ただ単位を取らせるのではなく、単位にふさわしい学習をさせるのが狙いで、必要な学習時間として1日平均8時間を掲げる。旗振り役の菊池重雄教授は「放っておいたら勉強しない。大学全体での工夫が必要」と話す。少人数授業を増やし、各授業で課題を出すよう教員に求めているのは、そのためだ。
「8時間」の根拠は、全ての大学が守らなければならない「大学設置基準」にある。卒業には124単位以上が必要。1単位には授業と自習時間を合わせて45時間の学習が求められ、4年間で卒業するなら、1日平均8時間が必要になるわけだ。
1~3年に単位を稼ぎ、4年で就職活動に専念するのでは、学習時間が確保できなくなる。このため、同大は各学期で取れる授業数を制限し、時間割では授業と授業の間を2時間空けて予習復習にあてるよう指導する。成果は成績でチェックし、ふるわない学生は個別指導。改善がなければ退学勧告する。
一方で、ハード面の整備も進める。学生が利用する学内カフェを早朝から開店させ、来春開館の図書館には学習室のほかレストランも併設するなど、腰を落ち着けて学習しやすい環境作りに腐心している。「大学はレジャーランドではなく学ぶ場、という世界の常識を実現する」と小原芳明学長は語る。
とはいえ、理想の実現へのハードルは高い。最大の課題は「教員の意識改革」(小原学長)だ。日本の大学では、教育を軽視する教員気質が根強い。同大にも、「何でそこまで」と反発する教員もいる。そうした教員に対し、「課題提出を求めるくせにチェックした形跡もない」など、学生の不満もあり、教員研修にさらに力を入れる考えだ。(編集委員 松本美奈)