政治そのほか速
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
マイナビは8日・9日の2日間、今シーズン、東京で初開催となる大型合同会社説明会「マイナビ就職 MEGA EXPO」を開催した。東京ビッグサイト全館を貸し切って実施され、2日間の参画企業数は1,230社、来場者数は約6万3,000人と、過去最大規模となった。
大型合同会社説明会「マイナビ就職 MEGA EXPO」開催
スケジュール後ろ倒しで学生からは「不安」の声も
日本経済団体連合会による「採用選考に関する指針」(2013年9月)を受け、3月1日に広報活動が開始された2016年卒の就職活動。インターンに参加した、あるいは外資系企業の選考を既に受けている、という声などもあるが、本格的なスタートダッシュを切ったばかりという学生も多い。
イベントに参加した男子学生は、「昨年とは違うスケジュールで戸惑いもあったが、(エキスポでは)興味がある業界の企業の説明を聞いて、理解を深めたい」と意気込みを語っていた。
足早に会場へ向かう就活生
人気企業のブースでは、開場後5分で立ち見が出るところも
活動の後ろ倒しについて、都内の大学に通う女子学生は「先輩の就職活動が参考にならないので不安。後ろ倒しになったということは、(就活)開始から卒業までの時間が短くなったということ。夏にしっかり内定を取れるように努力したい」とコメント。また、「公務員と併願を考えていたが、スケジュールの変更で一般企業の就活と両立ができるかが心配」と語る学生や、「後ろ倒しになった分、企業研究や自己分析に時間をかけることができている」という学生も。例年とは異なる就職活動に対する不安の声が上がる一方、就活準備をしっかり出来たという声も上がった。
選考期間短縮で企業も「採用が厳しくなる」と懸念
景気回復に伴い、15.5%の企業が「採用増を目指す」と回答している今年の採用活動。短期間で内定者数を確保しなくてはならず、9割以上の企業が「採用が厳しくなる」と予想している(「2015年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」)。
大手IT企業の人事担当者は、「3月に本格的なスタートを切ったばかりだが、既に多くの学生にエントリーを頂いている。ただし、外資系などは採用を始めているところもあり、8月選考活動開始の影響は大きく出る可能性がある」と語った。
説明会に参加する学生たち
各社は早期に母集団となる学生を確保するため、説明会で自社の魅力をアピール。社員を動員し、学生に積極的に声をかけたり、仕事についての質問を受け付けたりする姿が見られた。
また会場では、トヨタ自動車、電通、住友商事などによる企業講演があったほか、東急不動産、東京建物、野村不動産、三菱地所、森ビルの大手総合不動産ディベロッパー5社の採用担当が、街づくりの魅力や就職活動について、パネルディスカッション形式で学生の質問に回答するという合同説明会ならではのイベントも実施された。
総合不動産ディベロッパー 業界合同セッション「街づくりを担うディベロッパー合同セッション」
採用について、学生からリアルな質問が
ディスカッションで学生から「入社した決め手」について尋ねられた人事担当者は、「個性を大切にし、幅広い分野に対して自由に挑戦できる環境」「4~5年目で地図に残るような大きな仕事を主体的に任せられている点」「開発だけではなく、既存の物件にも働きかけをしている点」など、自社の魅力を語った。
説明する人事担当にも熱が入る
就職活動が早期化・長期化していた傾向を受け、学生が学業に専念できるようにと導入された採用時期の後ろ倒し。これまでとは異なるスケジュールゆえ、前述のとおり、イベントに参加した学生や企業の担当者からは「内定が取れるのか」「必要人員が確保できるか」と不安の声が多く聞かれている状況だ。
本来の目的である「学業専念」が実現しうるのか、それとも後ろ倒しに伴い研究活動などが妨げられてしまうのか。選考開始まであと5カ月、日本の就職活動はどのように変わるのか、しっかりと見届ける必要がありそうだ。
2016年の就職活動は始まったばかり
「地元の誇り、セレッソを応援や~」──。地元のサッカーJ2「セレッソ大阪」を応援しようと、同チームの本拠地であるヤンマースタジアム長居も近い大阪市東住吉区役所職員が13日まで、チームのTシャツを着用して窓口業務などを行っており、区民らの間で話題となっている。また、同チームに所属していた香川真司、柿谷曜一朗両選手のユニホームやスパイクを展示。地元区役所としても、セレッソのJ1復帰を街全体で応援したいという心意気が垣間見える。
香川・柿谷両選手が実際に使用したユニホームも展示
[写真]区役所の窓口対応職員はみんなセレッソ大阪のTシャツを着て対応=14日午前10時ごろ、大阪市東住吉区で
このユニホーム着用は、15日午後5時から、同区のヤンマースタジアム長居で行われるセレッソ大阪対大宮アルディージャの試合で、同区に在住、在勤、在学者がカテゴリー5自由席に優待価格で入場できる「東住吉区民優待デー」の実施に合わせ行われるもの。
また、それに合わせ正面玄関では、かつて同チームに所属していた香川真司(ドイツ・ドルトムント)、柿谷曜一朗(スイス・バーゼル)両選手が実際に使っていたユニホームやスパイクを展示。これは、セレッソ大阪から特別に借りたものだという。
15日のホーム開幕戦「東住吉区民デー」応援のため着用
[写真]区役所の窓乳幼児健診準備もセレッソTシャツを着て作業する職員ら=14日午前10時ごろ、大阪市東住吉区で
「区民デーを応援するために、職員は『セレッソTシャツ』を着て応援してるんです」と語るのは、同区役所政策推進課長代理の天満正一さん。自らもピンク色のTシャツを着用して、市民らの応対にあたる。だが「さすがに外出の時は、脱いでます」と笑みを浮かべながら話す。
13日午前に同区役所を訪ねると、窓口の職員らがセレッソTシャツを着て対応。乳幼児健診の準備にあたっていた、保健福祉課健康づくりの職員らも、Tシャツを着ながら作業を行う。「これを着ていると、子どもさんらは『あっ、セレッソや』と喜んでくれるんです」と同課職員。中には、区民優待デーの試合前に、キックオフ前のフラッグベアラーとして参加予定の職員もおり「街ぐるみでセレッソを応援します」と話していた。
案内担当の職員、Tシャツ見せ「セレ女」使用です
[写真]かつてC大阪に所属していた香川・柿谷両選手のユニホームもなども展示
また、同区のキャラクター「なっぴー」の着ぐるみも、セレッソ使用となっており、香川選手のユニホーム横に一緒に展示されている。それを見守る案内担当の職員はTシャツを見せ「私も『セレ女』使用です」とうれしそうにTシャツを見せる。
訪れた多くの区民もこのシャツに反応を見せており「セレッソは区民の誇りですから。J1に上がってもらえるよう頑張って応援します」と意気込んで話していた。
展示は13日まで、同区役所正面玄関で。詳しい問い合わせは、同区役所(06・4399・9683)まで。
地図URL:http://map.yahoo.co.jp/maps?lat=34.62216222999999&lon=135.52660055&z=14
本記事は「THE PAGE」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。
[写真]楢葉町や富岡町などの「ブランド被災地」に挟まれる広野町。写真は町役場
東日本大震災から丸4年となる3月11日、全国で震災を異例する追悼式典が開かれました。県単位ではもっとも大きな犠牲者数を出した宮城県の沿岸13市町だけでも、約1万3200人が自治体の主催する異例式典に参列し、哀悼の意をささげました。
津波で約4000人が犠牲となった宮城県石巻市では式典に約1000人が参列し、市内6か所に設けられた献花台には、計2200人が献花を行いました。一方、津波で74人の児童と10人の教師らが犠牲となった同市立大川小学校の旧校舎では、遺族会主催の慰霊式典が行われ、遺族や卒業生、地域の人々約200人が参加しました。
「ブランド被災地」の陰に隠れ……
[写真]震災から4年となる3月11日、宮城県石巻市の大川小学校では慰霊式典が行われ、2時46分に合わせて、防災無線からサイレンが鳴るなか、参列者たちが黙祷を捧げる
震災から5年目に入り、メディアから伝えられる現地の情報は徐々に減ってきています。そうした中でも、陸前高田、気仙沼、南三陸、石巻、南相馬など、今も関心の高い被災自治体がある一方で、なかなか大きく取り上げられない被災地もあり、その差は顕著です。
社会学者の開沼博さんは、震災によって関心が集まるようになった「ブランド被災地」とそれ以外の自治体の分化が、震災から1年経った頃から顕在化し、そのことで「ブランド被災地以外の課題を覆い隠してしまう危険性がある」と2013年段階で指摘しました。
ジャーナリストの亀松太郎さんは、そんなブランド被災地以外の地域を「マイナー被災地」と呼びます。
「単純に被災地と言っても、被災の状況はバラバラ。津波で深刻な打撃を受けた地域もあれば、原発事故の影響を受けた地域もあります。同じ自治体の中でも、モザイク状に被災の状況が違っています。そうした複合的な状況を抱えながら、詳しい情報がその地域以外になかなか伝わっていないのを見て、記事を編集するときの見出しに『マイナー被災地』とつけたのが最初です」
産業振興が課題:岩手県野田村
県との合同追悼式が行われた岩手県野田村は、町の中心地が津波で浸水し、沿岸の住宅479棟 が全半壊、39人の村民が犠牲となりました。現在、防災を基本とした土地整備を中心に復興計画 が進められています。
40年近くにわたり村議を務めている宇部武則さん(73)は、「復興は着実に進んでいる」と分析します。2013年には、NHKの朝の連続テレビ小説『あまちゃん』が人気となり、舞台のロケ地の一つでもある野田村に、ドラマを見てファンになった観光客が訪れるようにもなりました。
「震災後の支援ボランティアや『あまちゃん』ファンによって、目に見えるように多くの人が村の外から人が訪れるようになった」(宇部さん)
野田村にとって、これからの最大の課題は産業振興です。現在の人口は約4500人。震災前に比べて、およそ150人減ったことになりますが、人口流出に歯止めをかけるためにも、産業振興による地域の活性化は不可欠です。
「震災によって自宅を失った人だけでなく、若い人などが仕事を求めて北にある久慈市や内陸の盛岡市へと移ってしまった。しかし、2013年から2015年で、約250人も村民が増えているのです。復興が進み、住む場所や仕事があれば、人は戻ってくとわかりました。けれど、産業振興に明るい展望はありません」と宇部さん。効果的な具体策が見出せていない町の現状です。
震災前に抱えていた課題が、震災によって更に表面化した被災自治体ですが、「ブランド被災地」などでは、震災観光ツアーやコンパクトシティ構想などによって、震災によってできた外部との連携を有効に使いながら・大胆な町の改革が試みられています。しかし、「マイナー被災地」では、そもそも外部との連携も少なく、震災復興と震災以前の課題克服を一挙に進めるような手法が取りにくいのです。
2つの原発に近い:福島県広野町
[図]福島第一原発から30キロ圏内に位置する広野町
福島県浜通りにある広野町は、津波や地震の影響で2人が死亡し1人が行方不明。300以上の住宅が全半壊となりました。
さらに深刻だったのは、東京電力・福島第一原発の事故の影響です。福島第一原発から30キロ圏内、第二原発から10キロ圏内にある広野町は、避難指示対象地域となり、多くの住人が町外に避難しました。震災前は約5500人が広野町で暮らしていましたが、今年1月末現在で約3分の1となる1800人が町に戻り、約3000人が週に1度以上、日中を広野町で過ごしていると町は考えています。
[写真]「少しでも広野町の情報を町外に発信したい」と語る遠藤町長
「日中、約3000人の町民が町で生活し、原発作業や除染作業のために広野町で長期宿泊する人などが約3000人、合計で震災以前よりも多い6000人が広野町で生活を営んでいる計算になります」
そう分析するのは遠藤智町長。まずは生活インフラである商業施設などが再開し、今いる町民の生活負担を軽減させることが優先事項と言います。その一方で、町外に住む町民のうち、約4割が健康を不安視し、3割が放射線量を心配している姿が、町の住民アンケートから浮き彫りになりました。
「町外に避難している皆さんには、帰還を無理強いするようなことは絶対にできません。町内のほとんどは除染活動などによって放射線量も低く抑えられており、引き続き住民の皆さんが安心できるような取り組みを進めて行くと同時に、町からの情報発信を積極的に行って行きたいと思っています」
広野町は南のいわき市、北の楢葉町や富岡町といった「ブランド被災地」に挟まれているため、メディアで取り上げられる機会が少なくなると遠藤町長は危惧しています。
「そのためメディアの取材を積極的に受け、少しでも広野町の情報が町外に発信されるようにしています」
存続の危機:三陸沿岸の集落
[写真]震災前には160人が暮らしていた女川町の御前浜地区。ここに積み上げられた土砂は、この集落の復旧工事に使うのではなく、市街地造成の土盛などで使われるもので、一時的にこの集落に保管されるために積み上げられている。御前浜地区の高台造成が完成し、地域の人たちが戻れるのは、2016年末の予定
宮城県女川町も震災で関心を集める「ブランド被災地」と言えるでしょう。しかし、そんな女川の中にも「マイナー被災地」は存在しています。
女川の市街地から沿岸を車で15分ほど走ると、御前浜という集落に到着します。震災前には160人の住人がいましたが、津波の犠牲にならなかった家屋・建物はたった2軒だけ(津波による犠牲は13人)。復興計画が進んでも、この集落に戻って住むという意思を示しているのは、今いる3世帯を含めて14世帯のみです。漁業を営んでいる人たちを中心に、コンパクトシティとして生まれ変わる市街地ではなく、この小さな集落に残るのだそうです。
リアス式海岸が続く宮城県・岩手県の三陸地方には、震災前にこの御前浜と同じように小さな集落が数え切れないほど点在していました。そうした小さな集落は、いま存続の危機を迎えています。1次産業の担い手が減少していることに加えて、震災の被害が大きな影を落としているのです。
被災地から離れたところから震災の情報を受けていると、どうしても先行する中心地の復興やブランド被災地の現状ばかりが目につきます。その裏にある、様々な厳しい課題を抱えるマイナー被災地の現状が覆い隠されてしまっているのは、開沼博さんの指摘通りです。
3月12日は、東日本大震災の翌日、長野県栄村が震度6強という長野県北部地震に襲われた日です。3人が犠牲になり、約200戸の家屋が全半壊。現在、すでに仮設住宅などの避難者はいませんが、自宅再建が適わなかった村民など53人が、災害村営住宅で暮らしています。
被災地以外で情報を受ける私たちが、まだまだ厳しい状況にある被災地を見守るように関心を持ち続ける事が震災を風化させないために大切です。
(渡部真/フリーランス編集者)
本記事は「THE PAGE」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。
[写真]ボッシュがPSAと共同開発したトルクベクタリング・ハイブリッド4WDシステム。4つのタイヤの駆動、減速制御をそれぞれ別々に行うことで驚異的なハンドリングを実現するというハイテクシステム
かつて自動車メーカーから図面を支給されて、下請けとしていかに安く歩留まり良く部品を作るかだけを求められていた部品メーカー(サプライヤー)が、どのようにして技術提案型のビジネスを構築してきたかを前編に書いた。
iPhoneやMacで有名なアップル社は、商品を企画し、販売もするがそれを生産する工場は持たない。数々のサプライヤーに外注し、それを外注で組み立てさせる。メーカーでありながら工場を持たない「ファブレス化」である。モノ作りの現場にはもはや利益が期待できない。企業に利益をもたらすのは商品企画と販売だという冷徹な事実がある。
「そんなのデジタル産業だけの話だ」という反論はあるかも知れないが、現実にトヨタは新型車の発表会などで何度も「スマイルカーブ」の説明をしている。スマイルマークの口の形のように、時間軸で見た時の両サイド、つまり商品企画と販売では厚い利益が期待できるが、真ん中の生産行程は下にぐっと下がって利益を産まない。
少なくともトヨタは、それを対外的にアナウンスする程度には生産工程の先行きを悲観しており、「商品企画と販売に力を入れて利益率を上げていきます」という戦略を伝えているわけだ。トヨタに「自動車ビジネスをわかっていない」と言える人はそうそういないだろう。
サプライヤーの戦略
しかし、たとえ利益率が薄くとも巨大自動車メーカー数社分をまとめれば絶対額としての利益は残る。1990年代の半ばから、そうした数の論理でサプライヤーは地位を築いた。そして2000年代に入ると、次なる戦略として独自の技術開発を行って技術的イニシャチブの一部を握ろうとしたわけだ。
例えば、アンチロックブレーキについて考えてみよう。アンチロックブレーキの基本的な成り立ちは、ホイールの回転速度を測るセンサーがあり、収集したデータを演算するプロセッサーがある。プロセッサーは油圧コントロールバルブを制御して、ロックしそうなブレーキの油圧を緩め、グリップが回復したら再度油圧を高める。
制動時のタイヤのスリップ率は約20%が最適であることはどのクルマでも一緒なので、センサーやプロセッサー、油圧コントロールバルブはどこのメーカーに納品するにしてもほぼ同じ仕様で問題ない。あとは車両の重量バランスなどを考慮して制御ソフトをローカライズすればOKだから、前述の数の論理で押していかれるわけだ。
量産化が図れるので、自動車メーカー1社が開発するより、サプライヤーからシステムで買った方が安くなる。しかしアンチロックブレーキの様なシステムはすでに特許で保護されている部分は多くない上、技術的にも難しくない。いわゆるコモディティ化してしまっているのだ。そうなればどこのサプライヤーでも作れるようになり、価格の叩きあいが始まる。
[図表]世界の主な自動車メガサプライヤー
それではサプライヤーは美味しくない。そこでアンチロックブレーキに新技術を付加して差別化する。例えば、右コーナーでアンダーステアが出て車線を飛び出しそうになった時、右後輪のブレーキを単独で効かせてクルマを右に向かせるような車両安定化ブレーキシステムに進化する。
技術は常に進化するから、これもやがてコモディティ化の憂き目に遭う。そこで今度はステアリングもアシストして制御することにして再び差別化を図る。こういういたちごっこの流れの先に、現在の様なサプライヤーが技術的イニシャチブを部分的とはいえ、持つ状況ができたのだ。
いたちごっこによるシステムの肥大化は、開発資金の高騰を招き、結果サプライヤーは資本規模を要求されるので、最先端のシステムを作れるサプライヤーが厳選されてくる。そうやって生き残ったのが、ドイツのボッシュ、日本のデンソー、ドイツのコンチネンタル、同じくドイツのシェフラー、アメリカのデルファイとビステオン、カナダのマグナ・インターナショナルという7社のメガサプライヤーである。
目覚めた日本の自動車メーカー
自動車産業全体がかつての「垂直統合」から「水平分業」へと大きく変貌しつつある。すでに欧州は水平分業化が進んでおり、日本は今まさにその途上にある。ディーゼルエンジンの開発で欧州のメガサプライヤーと接点を持ったことで「世界のことを知らなかった」と痛感した日本のメーカーは、急きょ組織作りを始め、2014年に自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)を発足させた。
自動車メーカーには各社の軸になるコア技術があることはもちろんだが、一方で各社の共通課題も多数存在する。それらを分散したまま各社がコストと時間を費やすのはあまりに無駄だ。そのためAICEをインターフェイスにして「共通課題」を共有し、大学や研究機関などの協力を得て技術のスタンダード化を狙おうと考えたわけだ。それによって各社は自社のコア技術にリソースを集中することができ、協力体制を築くことがむしろ各社の個性を伸ばすことに結びつくのだ。
AICEの設立発表会で使われたスライドには、欧州と日本の現状を分かりやすく例えたイラストがあった。課題という山を越えるに際して、欧州のメーカーは分担してトンネル工事を始めた。一方で日本のメーカーは、各社が独自に専用道を切り拓き別々に山越えを図った。その結果トンネル開通後は、EUが圧倒的に有利になった。近道ができただけでなく、分業の試行錯誤の過程で効率化の手法そのものを学び取ったからである。
[写真]日本のクルマ好きの多くが特別の念を抱くスカイラインの心臓がベンツ製ダウンサイジングターボになったことは衝撃を持って迎えられた
メガサプライヤーが7社に絞られると、自動車メーカー側も「おたくの条件では高すぎるから他社のシステムに切り替えます」と簡単には言えなくなる。欧州のメーカーは共通課題を共有することで連合し、複数社が仕様を揃えてメガサプライヤーと戦うというステージに到達している。例えばベンツとBMWが、ある部品の仕様を揃えることで購入数量を増やし、サプライヤーにプレッシャーをかけていく方式だ。
こうしたスタンダード化はさらにバリエーションを増やしていく。メガサプライヤーとメーカーの間だけではなく、メーカーとメーカーの間でもスタンダード化が始まっている。日産のスカイラインがベンツのエンジンを搭載したこともこうした一連の流れの一つだ。開発コストが莫大に必要なエンジンを共有することでコストを大幅に圧縮できる。つまりベンツとルノー/日産の協業体制は技術のスタンダード化の表れと言えるのである。
産学連携時代の始まり
もう一つ、新しい流れがある。サプライヤーが技術を売りにし始めたとはいえ、そのビジネスの基本はOEM部品の販売だ。結局落とし所は部品を売ることにある。であれば、部品の利益がある分、開発だけを委託するより値段が下がってもおかしくないのだが、現実にはそうならない。それはサプライヤーの生産工場のキャパシティという制約によって、無限に受注を増やすわけにはいかないことに起因している。
メーカーのサプライヤー依存度が高まって行けば、サプライヤーの受注は増える。しかし、いくら注文を増やされても、工場がフル稼働している状態であればサプライヤーは対応できない。新たな生産設備を増設するのはコストもかかるし、リスクもある。それでも成長しようと思えば単価を上げるしかない。その結果、メガサプライヤーの商品が割高になってきたのだ。
そこで現在、注目を集めているのが技術会社(エンジニアリング会社)だ。エンジニアリング会社は、開発は請け負うが生産をしないため設備リソースの制約がない。そしてある程度スタンダード化された技術であれば、受注先が増えても開発の人材を受注数に比例して増やさずに対応できる。基礎的な部分は共通でローカライズだけすればいいからだ。その結果、自動車メーカーにとってはサプライヤーより安価に開発を依頼できる新たなパートナーとして注目されているのだ。
こうしたエンジニアリング会社は大学の研究機関と密接に関係しており、まさに産学協同の体制になっている。英国・ケンブリッジ大学とリカルド、ドイツ・アーヘン工科大とFEV、ドイツ・ベルリン工科大はIAV、オーストリア・グラーツ工科大/ウイーン工科大に加えドイツのダルムシュタッド工科大などと幅広く連携するAVLという具合に産学連携で技術開発を行っている。学生たちはインターンでエンジニアリング会社に行き、スキルを習得して学位を取ったら大学に戻るなど、大学の研究をエンジニアリング会社が利用する一方で、人材交流による研究者や技術者の育成にも寄与しているのだ。
新時代の自動車開発
[写真]ベンツが開発した4気筒エンジンは外見からはそれとわからない装飾が施されている。新時代のパーツスタンダード化の一つの象徴とも言える
サプライヤーに外注するにせよ、エンジニアリング会社に外注するにせよ、自動車メーカーはこれまでと違う動きが求められる。外注先の仕事を定義するのは「仕様書」だ。メーカーは当然その部品に何が求められるのかについて十分な知識がある。これまでのように内部で、あるいは長年の付き合いのある下請けメーカーと取引するならば、その仕様はあるていど阿吽の呼吸で何とかなる。いわゆる暗黙知というヤツだ。
しかし全く別の文化を持つ海外のメーカーにそんなことは求められない。同じ外注でもその仕様の書き方が違ってくる。「仕様書に書いてなくてもそのくらいは察して欲しい」と日本のメーカーが思う一方で「仕様書の通りに出来ているのに何か問題があるのか」という行き違いが起きるのだ。異文化を持つ企業に思った通りの部品を設計、開発、製作してもらうのは、これまでと違う基準を作らねばならない。
もう一つ、日本のサプライヤーの未来の話もしておきたい。デンソーはボッシュに次ぐ世界ナンバー2のサプライヤーだ。しかしその株式の24.73%はトヨタが保有している。さらに言えば8.70%は豊田自動織機の保有となっており、完全にトヨタグループの一員だ。ここにジレンマがある。
デンソーは当然ボッシュを抜きたい。世界一のサプライヤーを狙える地位にいるのだからそれは当然だろう。しかし、そのためには世界中の自動車メーカーと等距離の立場を取り、リソースをフルに使い切りたい。これがトヨタの思惑とぶつかる。トヨタにしてみれば、グループ内のデンソーに仕事を頼みたい時にリソースがいっぱいでは困る。「他社との取引をするなとは言わないが、ウチの話が聞けない状態になってもらっては困る」と考えているはずだ。
しかし、それではいつまで経ってもボッシュの背中を捉えることができない。一方のドイツ本国のボッシュは世界一のサプライヤーでありながら、株式非上場で完全に独立を保っている(日本のボッシュは様々な経緯があって現状ではドイツボッシュの子会社だが上場している)。特に研究開発が重要な業種にとって、長期展望を株主に邪魔されずに描ける意味は大きい。
日本の自動車産業がさらなる発展を遂げていくためには、水平分業の時代に、メーカー、サプライヤーがそれぞれの戦略を持ち、時代に即した新技術の開発を継続していかれるメソッドをどう構築するかにかかっているのだ。
(池田直渡・モータージャーナル)
本記事は「THE PAGE」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。
「速さは全てを解決する 『ゼロ秒思考』の仕事術」(赤羽雄二著、ダイヤモンド社、1500円税抜き)=写真=は、コンサルティング会社出身の著者が仕事のスピードを上げるコツを伝授する。
不安をメモに書き出して思考を整理する方法や、仮説思考の身に付け方など。毎朝・毎晩30分を情報収集にあてる、パソコンに単語登録する、などの実践的なノウハウも豊富。