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今春開校した京都市立東山泉小中学校(東山区)では、6年生の授業時間が、学校教育法施行規則で示された小学生の標準(45分)より、1コマ当たり5分長い。
小学校6年、中学校3年の「6・3制」ではなく、「5・4制」の同校では、6年生は中学生(7~9年生)と同じく東学舎で学び、50分授業なのだ。コマ数は英語が多い以外標準通りで、授業は1年間で計約90時間長い計算になる。
開校前に作成した授業計画書(シラバス)では、6年生の各教科について「50分授業の工夫」という欄を設け、授業ごとに長くなった5分で、小テストや前回の振り返りなどを行うとした。だが、夏休みまでは徹底されていなかった。
転機になったのは、8月に発表された今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果だった。6年生は国語、算数ともに基礎力を測るA問題が弱く、特に漢字の読み書き、分数の計算などで正答率が伸び悩んだ。
「長くなった授業時間を有効に使おう」。教員らで話し合い、基礎的な学力がつくように、シラバスにある工夫を意識して実施することにした。
11月中旬、6年2組の算数の授業では、担任の谷口真由教諭(34)が冒頭、問いかけた。「前回、何を学びましたか?」
児童たちは「方眼紙に半径10センチの円を描きました」「方眼紙の升目を数えて、だいたいの面積を出しました」と口々に答えた。ノートを開き、円の面積を調べた前回の学習を復習。その後、グループごとに、円の面積を求める公式を考えた。
谷口教諭は「最初の5分間で前回の学習内容を思い返し、今日学ぶ内容とのつながりを自ら考えられるようにした」と狙いを語り、「全員が授業に積極的に入っていけた」。
6年生の学習への意識は、中学生と同じように年間5回受ける定期試験でも変わった。
6年2組の畑中咲楽(さくら)さん(12)は「定期試験は小学校のテストと違って範囲が広い。直前だけでなく、日頃から勉強する習慣がついた」と話す。放課後、東学舎1階の自習用スペースを利用する6年生も増えてきた。
定期試験ごとに平均点は上昇傾向だ。6年4組担任の三木隆史教諭(40)は「テスト結果を見て、児童自身が自分の学力の現状に気づき、危機感を持った。小学校のテストに物足りなさを感じていた児童もやる気になった」。
中学生と同じ長い授業時間と定期試験。東学舎の今津敏一教頭(51)は「6年生は新しい学校生活に慣れつつある。中学校にスムーズに移行させていきたい」と力を込めた。
山口県下関市の公民館に昨年12月末、全国から教師約60人が集まった。
同市立勝山小学校の福山憲市教諭(54)主宰の教師サークル「ふくの会」が開いた勉強会だ。
福山教諭が配った自作の問題プリントの1問目は、「『○人(うど)』という言葉を少なくとも5つ以上書き出そう」。若人(わこうど)、仲人(なこうど)……。1分間で書けた教師はゼロ。「わからない子の気持ちがわかるでしょう」と福山教諭。
その後、初対面同士の参加者に相談させ、「最初に名前を言ってあいさつした人は? 先生がしないと、子どももやらなくていいんだと思ってしまう」。「授業中、子ども同士で相談をさせた時は誰が声を掛けたかをよく見て、認めてあげて。正解を出す以外でも様々な視点で評価を」。テンポ良く、授業をする心得を伝授した。
広島県から参加した友田真教諭(30)は「一人ひとりを認める大切さがわかる。子どもが時間を惜しんで勉強したくなる授業につなげたい」と話した。
福山教諭は、母子家庭できょうだい4人を育てた母を助けたくて、安定した給料が得られる教師になった。1983年、最初の担任は小学2年生。先輩教師からは「勉強せないかんよ」と声を掛けられたが、「教える内容は難しくないのに」と理解できず、教師用テキスト通りの授業をしていた。
ところが、1か月ほどたった頃、社会科の授業中に女子児童が突然、大きな声で「面白くない、やめよう」と言い出した。他の児童も騒ぎ出し、つまらない授業だったことを思い知らされた。先輩教師主宰の自主勉強会に顔を出すようになった。
授業を報告するたびに、「威圧して抑えているだけで子どもを育てていない」「子どもの行動の理由を考えたことがあるの」と、参加者から批判された。学力やつまずきを踏まえてオリジナルな授業をするようになり、問題プリントも自作した。児童から様々なテーマで自主学習ノートが提出され、毎日高さ2メートル分になった。単元ごとのテストの平均点はどの教科も95点に上がった。
「子どもが勉強したいという気持ちになれば、学力は上がる。やる気に火をつけるのが教師」と確信した。
「子どもに学ぶ意欲を持たせるには、教師も学び続けなければ」と、教師になって3年目に、「ふくの会」を設立。月2回、勉強会を開催し、今年4月、設立30年を迎える。今も教材の提示や声かけの方法などの研究を続け、共著も含め二十数冊の本をまとめた。
勝山小では、2013年度から初任者の研修・教育を担当している。定年まであと6年。「若手を育てながら、『授業人』としての腕を上げたい」と、また担任をするのが希望だ。
勉強は嫌い、ケンカはする。
丸刈りを義務づける校則に抗議して、教室の机と椅子を全部、外に出してしまったこともあります。東京都立多摩工業高校時代、やんちゃな私を一目見ようと他校の生徒が校門前に集まったこともありました。
でも単なるワルじゃない。正義感は強くてねえ。駅で仲間がチンピラに絡まれたり、本屋で女子が他校の男子にからかわれたりすると、助けにいきました。
テストの成績は悪かった。数学で赤点取った時は、先生に「のっぴきならない事情で準備ができませんでした。今後、点を取れるよう頑張ります」と一筆書いたなあ。ユーモアと要領で何とか切り抜けようと画策したんだ。本当に困った男でした。
カンニングペーパーを作ったこともある。リポート用紙の1行に、小さな文字で3行びっしり書き込む器用な技を持っていました。ただ夢中になって作っていると覚えちゃうんですね。しかも試験中は、答えを見られる安心感で妙に落ち着くんだなあ。結局、カンニングペーパーは使わずに済みました。
高校で3年間担任だった飯塚幸郎先生は当時30歳代。よく面倒をみてくれました。保護者面談は他の人が5分のところうちは45分。先生は「話が面白くて頼りになる」「要領の良さを勉強にいかせば成績も上がる」と言ってくれました。
先生の口癖は「やりたいことに情熱を燃やし、堂々とやれ」。必要以上にその教えを守って、随分迷惑かけちゃったなあ。でもそのおかげで色んな経験ができて仕事に役立ってます。個性を受け止める大人の存在はいつの時代も大事ですね。(聞き手・桜木剛志)
(2014年8月7日付読売新聞朝刊掲載)