◇与党協議会が開始
自民、公明両党は13日午前、国会内で、安全保障法制に関する与党協議会を開き、集団的自衛権の行使容認を含む安保法制の整備に向けた議論を開始した。武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」で、武装集団が離島に上陸した場合などの自衛隊の出動について、電話による閣議決定での命令を可能とする方針で一致した。政府は昨年7月の安保法制整備に関する閣議決定で明記されていなかった米軍以外の関係国の艦船などの防護も対象とする方針を示し、自民は賛成したが、公明から慎重論が出て、引き続き議論を続けることとなった。
両党は集団的自衛権の行使容認を含めた安保法制の骨格を3月後半にまとめる方針を確認。政府はこれを踏まえて4月の統一地方選後に関連法案を国会に提出する方針だ。
協議会の座長は自民党の高村正彦自民党副総裁が務め、公明党は北側一雄副代表らが参加し、両党6人ずつ計12人が参加した。高村氏は冒頭、「憲法の法理の範囲内で、あらゆる事態に切れ目なく対応できるように、建設的な議論をしたい。3月中のそれほど遅くない時期にまとめられればと思っている」と述べ、早期のとりまとめに意欲を示した。一方、北側氏は「要件や手続きを明確な形で議論し、法制化を進めなければならない」と強調。「個別の項目ごとに合意をするのではなく、全体のパッケージとして合意を目指す形で進めさせていただきたい」と語った。
艦船防護について、閣議決定は防護対象を「米軍部隊」としたが、政府は、閣議決定では明記されていない米軍以外の関係国の艦船などの防護も対象とする考えを示した。政府・自民党は、平時に自衛隊と共同で警戒監視や訓練を行っているオーストラリア軍なども防護対象に拡大すべきだと判断。これに対し、公明党は閣議決定の範囲を超えて自衛隊の役割が拡大することには慎重で、両党間の争点となっている。
菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で「集団的自衛権を限定容認する閣議決定に基づき、法律を提出すべく、まず与党の中のすり合わせを行うということに尽きる」と述べ、与党協議を見守る姿勢を示した。政府が検討する自衛隊による米軍など他国軍隊への後方支援に関する恒久法制定に公明党が慎重姿勢を示していることについては「具体的な法形式は決まっていないが、与党の中でまず合意を得ることから始めていこうということだ」とした。【飼手勇介、高本耕太】安倍晋三首相は14日、今年発表する戦後70年の首相談話について「歴史認識については歴代内閣の立場を全体として受け継いでいる。菅義偉官房長官を中心に、有識者からお話をうかがいたい。スケジュールは検討中だ」と述べた。公明党が求めている政府・与党の協議については言及しなかった。視察先の宮城県気仙沼市で、記者団の質問に答えた。政府は十数人程度の専門家から成る有識者会議の初会合を今月末にも開く見通しだ。
首相は談話の内容について「(日本が)先の大戦の反省のうえに立ち、戦後、自由で民主的な国をつくったこと、アジアや世界の平和と安定・繁栄に貢献をしているという発信を盛り込みたい」と改めて説明するにとどめた。首相は、米国や中韓両国が談話を注視していることも念頭に、具体的な表現については有識者の検討を踏まえて慎重に決める方針だ。【高橋克哉】